映画「持たざる者が全てを奪う」を観た。
パッケージとタイトルから「ピエロがお前を嘲笑う」のリメイク版かな? と思ったけど、どうやら違ったっぽい。だけど、ハッカー映画っぽいので観てみた。
感想。うーん、難しい・・・。ハッカーものというか、不特定多数のネット民が出てくるような映画って作り方が難しそうで、ネット空間というフィクション性とリアリティのバランスをどう切り取るかで、ベタで陳腐になってしまうリスクを孕んでいると思っている。それでもあえてこのジャンルに挑戦しているのは評価したいし、自分も何か新しい地平が観れたらいいなという気持ちで観ている部分はある。
そんな風に甘めに採点しても少し厳しいのが正直な感想。本作のハッカーは、カード詐欺×ダークウェブのソーシャルハッキングという感じなので、人によっては肩透かしに感じるかもしれない。
主人公のモノローグと共に進んでいくんだけど、そのせいで淡々とした印象になってしまい、見せ場のシーンもあまり盛り上がらなかったし、ストーリー展開(ダークウェブのカリスマであるゼットの正体とか)もやや唐突な印象があったのは残念。カメラワークとか演出もそこまで新しさは感じなかった。
あと、実話をベースにした映画、という煽り文句が映画の冒頭でも出てくるんだけど、どこまでが実話ベースなのかも分からないし、何の事件が元ネタかもソースないし、その根拠のなさが逆にチープ感を出してしまっていて残念。
だけど小道具として携帯はBlackBerry、ノートPCはALIENWAREを使っているので、そういうガジェット好きにとってはポイント高い。
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庶民にとっての戦争。映画「この世界の片隅に」を観た。
去年から話題になっていたけれど、最近ようやく近所の映画館でも上映されることになったので観てきた(当時は3月)。
公開初期の上映館数少ない頃から割と絶賛されまくっていたので、賛否両論のバランスが悪いな・・・という一抹の不安もあったんですが、普通に良い映画で安心した。
感想。この映画は御存知の通りの戦争モノなんだけど、庶民から見た戦争という印象がある。戦時中にある戦場で戦った一兵士の話でもなく、日本のために散ったゼロ戦パイロットの話でもない。戦争の時代を生活していた庶民、女性が主人公の話。そういった距離感の作品はなんだか新鮮だった。
主人公のすずさんは造船所の街である呉に嫁いできたのほほんとした女性で、あくまで淡々と日々の生活を追っていくように話は進む。とは言え、もちろん戦争の影は作品全体に広がっていて、物資不足による日々の生活の緩やかな変化だったり、昨日まであったものがなくなるといった形で表現されている。
そうやってすずさんの幼少期から嫁いだ時の事や、結婚生活なんかの色々なエピソードが積み重ねられていくんだけど、日記のように「〇月×日」みたいなテロップが入るんだけど、日本人なら誰しも知っている場所とXデーが着実に近づいていることが分かる演出は地味にハラハラさせられる。
全体として丁寧に作られているなと感じるし、原作の絵柄や空気感、昭和っぽい演出(ありゃー、みたいな)も上手く再現されていて良かった。 登場キャラはそれぞれ思う所はありながらも口には出さず目の前の日々の生活や日常を淡々と、時には楽しむように過ごしていくので、当時のいわゆる大日本帝国時代の末端の庶民はこれくらいの温度感だったのかなと思わせるだけの説得力というかリアリティは感じる。
だからこそ、敗戦のニュースを聴いた時のすずさんの感情の爆発は、心に響いた。すずさんにとっては、日々を感情豊かに過ごす生活と戦争が地続きのもので、そうやって悲しさや怒りの感情を出さずに楽しそうに過ごすことがすずさんにとっての戦争だったのだと、一瞬で反転させて気付かせる演出がすごい。
あとエンドロールで描かれる、すずさんとおりんさんのならなかったもう一つの未来もじんわりと沁みる。良い映画でした。多くの人に観てもらいたいと思える作品。
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これを反戦映画とか教育的か(小中学生に推奨できるか)というと、小中学校を「はだしのゲン」で育った人間としては、うーんとは思う。はだしのゲンが教育的かという議論は置いておいて(笑) 色々な意図は付加できるけど、あくまで政治的・教育的な意図から離れて観るべき出来のいい映画・アニメ・作品であって、まあ終戦記念日には毎年「火垂るの墓」と交互に放映してもいいんじゃないかなあとは思うなどした。
KONOYO NO OWARI。「ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー」を観た。
正確に言えば映画ではないが、なんとなく衝動的に観てみた。ちなみにレンタル屋では「その他・ドキュメンタリー」の棚を一生懸命探していたけど、あったのは「邦画・ドラマ」コーナーだった・・・。
ナオト・インティライミとは何者か。失礼ながら代表曲が何かも知らないし、少し前にネット民の間でコラ画像とかネタにされていたのを知っている程度だ。そんな中でこの記事を読んで興味を持ったので観てみた。
感想。 ナオト・インティライミの心臓が強すぎる。明らかに違う方向に向かっているポジティブさと一言余計なこと言っちゃう感じが、自分の弱い心臓をギリギリギリーとさせるスリル。最初からネタとして観ていた部分はあったにしても、全編通して面白かった。本人のナレーションが全編通してさざ波程度に感情を逆立たせるのも絶妙。
特に面白かったのはエチオピアのとある部族の村に行く序盤のエピソード。現地で飲まれているコーヒーを飲ませてもらって驚愕の一言「泥の味がする」から、現地の流儀に従うのがナオト流というナレーションと共に半裸になるが、次の日に「泥の味のコーヒーと半裸で過ごしていたので体調は最悪だ」というナレーションと共に、ものすごく具合の悪い顔をしたナオト・インティライミの顔アップ。その日は現地の人の好意で、放牧している家畜を見せてくれるということで、草原を歩いているらしいんだけど、あと数キロ歩かないと辿り着かないと聞いた瞬間、体調が悪いからこれ以上歩けないと現地の人に告げるナオト・インティライミ。その時の現地の人の顔。そして、リタイアしたナオト・インティライミを置いて歩いて行く現地の人。その背中を見ながら「あー、めちゃくちゃ歩くの速い」と呟くナオト・インティライミ。そして、いきなり村から離脱して街のホテルに泊まり「薬を飲んで、水をたくさん飲んで、よく寝て汗をかいたら治った」というナレーションと共に、何食わぬ顔で再び村に顔を出す展開は完全に予想外で笑ってしまった。
その後も別の国で8年半ぶりに大物ミュージシャンに会いに行って、ライブに乱入しようとしたり、見所(ツッコミ所)は多くて、意外と楽しめたのは良かった。
その中でも一番ヤバいと思ったシーンは、フェスに参加していたナオト・インティライミが超笑顔で「今この瞬間に爆弾が落ちてきたら、と思ったら鳥肌が立ってきた。人生で初めての経験」とナチュラルに語るシーンで、この時の語り口や表情がナオト・インティライミの基本的に溢れんばかりのポジティブさとこの世の終わりにも似た絶望を同時に覗かせていて、とんでもないシーンを見てしまったという気持ちになった。このシーンだけでも観る価値はあると思う(笑)
Amazonビデオからも見れるっぽい。