実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

タイトルの本当の意味。映画「ゲットアウト」を観た(後半ネタバレ)。

 アカデミー賞関連で、脚本賞を取って話題になっていたので観てみた。↓のパッケージが一番この映画を象徴していて好き。観終わった後に改めて見返したくなる。

ゲット・アウト(吹替版)

 感想。やられた! いや、やられた・・・? タイトルである 「Get Out !(出ていけ!)」という言葉が、ストーリー上で重要なキーワードになってはいるんだけど、他の部分(真相)でのインパクトが強過ぎて、正直言って印象が薄い。でもまあ、事前情報(あらすじ)よりも斜め上の展開で面白かった。この映画はある種の、人種差別がテーマと言えなくもないんだけど、作中でも少し触れているように古いテーマではあるんだけど、ある意味では現代でないと成立しない類のテーマのようにも思える。

 ラストは2パターンあって、オバマ政権からトランプ政権になって差し替えられたらしいんだけど、お蔵入りになったバージョンの方も、ある種の悪意があって悪くないと思うけど、あえてシンプルなラストにしたのはとても良いと思う。 

 この映画のテーマはともかく、仕掛けと展開は人によってかなり評価が割れると思うけど、映画好きなら観てほしいと思う。ところで話は全然変わるけど、自分はこの映画が大好きなんだけど、観てる人いる?

  楽しめた人なら、この映画も観てみようぜ! って言える・・・これ以上はネタバレせずに言及するの難しいので、以下のネタバレは「続きを読む」からどうぞ。

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最高にエンターテイメント。映画「バーフバリ 伝説誕生」を観た。

 バーフバリ! バーフバリ! これこそ2018年のお祭りムービーだ! 日本公開は2017年だけど、自分が観たのは今年だから関係ねぇ!というスタンス。

バーフバリ 伝説誕生(字幕版)

 マッドマックスFR(怒りのデスロード)やハイロー(HiGH&LOW)のような爆走お祭りムービーを観ることで人生のクオリティが上がる人は多いと思うので、そういうのが好きな人は観て損はない映画。

 インド神話を元ネタにしたインド映画なんですが、この映画では三代に渡る王の物語という壮大なストーリーで、まさに叙事詩。インド映画なので、歌と踊りももちろん入ってくるけど、ミュージカル調というよりかは、活躍しているキャラのキャラソングが流れるという感覚に近い。

 この映画は大きく分けて前半と後半に分かれるんだけど 後半の回想シーンの密度が異常に高くて、回想シーンが実質メインという面白い構成。その中でも戦争シーンが激熱で、謎の無双マシーンで暴れる王族と、ちぎっては投げで吹き飛ぶモブ敵達という爽快感がある。

 でも一番好きなシーンは序盤で、主人公に攻撃をかわされる度に、だんだんと美ジュアルコーディネートされていくヒロインのシーン。あと登場人物の感情の激しさが半端ない。主人公バーフバリの母親が小枝を拾い集める理由が壮絶な伏線過ぎて、そして絶対に回収される伏線だなと思うと面白かった。あと王の側近であるカッタッパのスライディングからの最敬礼が良かった。

 全体的な話のスケールと、キャラの感情のうねりが大き過ぎて面白い映画だった。観終わった直後の感想は「まさかの異常に熱い引きで終わり・・・いや、前編だったのか! 続き早く観たい!」なので、続きは後編の感想で。

バーフバリ 伝説誕生 [Blu-ray]

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侵略する日常。映画「散歩する侵略者」を観た。

 あらすじと予告編が面白そうだったのと同時に、話の展開にはあまり期待していなかったんだけど、後半からラストにかけての展開が意外な着地だったので、全体として自分好みの映画だった。

散歩する侵略者

 

 松田龍平の演技力が抜群に良かった。感情のない宇宙人の、異質感を十二分に発揮している。あと「夫が突然宇宙人になっていた妻」役の長澤まさみも、異質感を受け止めつつ戸惑う演技力も、一人の人間の心の機微を丁寧に捉えていて、目立たないけど地味にすごい。

 侵略者(宇宙人)以外の登場人物にもそれぞれの物語と問題や悩みがあって、それは具体的な悩みというよりは、ぼんやりとした不満や不安を抱えていて、それが直接言及されないものの、それぞれの等身大の不安が挙動や表情の演技に現れているのがすごい。その辺りの演技がちゃんとコントロールされているからこそ、中盤から後半にかけての少しだけの変化が、きっちり差異として伝わってくるのはとても上手いと思う。

 とにかく映画全体の雰囲気が好きで、日常と非日常の混在したドライな世界観がとても良い。リアリティに対するバランス感覚が絶妙で、長澤まさみが宇宙人になった松田龍平と不仲だった夫婦関係を再構築する話がひとつの主題になっているんだけど、ラストの展開辺りで精一杯の背伸びはするけどジャンプまではしない、という地に足の着いた感覚に新しさを感じた。上手くは言えないけれど。あと、台詞回しなんかがどことなく演劇調だなと思ったら、やっぱり舞台演劇が原作っぽい。ラストの展開はちょっと意外だったのも含めて余韻がある。

  さりげなく銃火器も含めたアクションシーンもいくつかあって、恒松祐里という人が割とガチめの格闘アクションをやっていて、見応えがあってとても良かった。

 

 

 スピンオフ作品のこっちも気になったので、そのうち観てみたいと思う。

 

ザ・実験作!映画「ザ・シャッフル」を観た。

 まず言っておくと、この映画は73分で、キャストはタイトル画像の通り4人しか出てこない低予算系の映画だ。つまり自分の好みの映画ってことです。ちなみにドイツ製作。

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  この映画に出てくる役柄はドラッグの売人、ボディガード、警官、取引相手の4役で、それを性格の異なる4人のキャストが4つの役柄をシャッフルしながら再演していくという構成で、主人公のモノローグを基調として、ポーカーのプレイを主人公の心象風景にストーリーが進んでいくという実験作。

 限られた場所と限られたキャストで・・・という意味では、舞台演劇とかでやられていそうな作品だけど、ポーカーテーブルの心象風景のシーンは映画でしかできない演出だと思うので、テンポが悪くなっていたとしても、必要な演出だとは思う。淡々と組み合わせを替えて話が進むので、そこは少しダルいかも。

 全体的な感想としては、試みは面白かったけど、ストーリーへの落とし込み方は「お、おう・・・そうか」という感じは否めないし、ちょっと尻切れトンボな印象はあった。時間も短いし、気楽に観れる作品だとは思う。

 

ザ・シャッフル(字幕版)