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実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

庶民にとっての戦争。映画「この世界の片隅に」を観た。

 去年から話題になっていたけれど、最近ようやく近所の映画館でも上映されることになったので観てきた(当時は3月)。

 公開初期の上映館数少ない頃から割と絶賛されまくっていたので、賛否両論のバランスが悪いな・・・という一抹の不安もあったんですが、普通に良い映画で安心した。

 

この世界の片隅に

 

 感想。この映画は御存知の通りの戦争モノなんだけど、庶民から見た戦争という印象がある。戦時中にある戦場で戦った一兵士の話でもなく、日本のために散ったゼロ戦パイロットの話でもない。戦争の時代を生活していた庶民、女性が主人公の話。そういった距離感の作品はなんだか新鮮だった。

 主人公のすずさんは造船所の街である呉に嫁いできたのほほんとした女性で、あくまで淡々と日々の生活を追っていくように話は進む。とは言え、もちろん戦争の影は作品全体に広がっていて、物資不足による日々の生活の緩やかな変化だったり、昨日まであったものがなくなるといった形で表現されている。

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

 

  そうやってすずさんの幼少期から嫁いだ時の事や、結婚生活なんかの色々なエピソードが積み重ねられていくんだけど、日記のように「〇月×日」みたいなテロップが入るんだけど、日本人なら誰しも知っている場所とXデーが着実に近づいていることが分かる演出は地味にハラハラさせられる。

  全体として丁寧に作られているなと感じるし、原作の絵柄や空気感、昭和っぽい演出(ありゃー、みたいな)も上手く再現されていて良かった。 登場キャラはそれぞれ思う所はありながらも口には出さず目の前の日々の生活や日常を淡々と、時には楽しむように過ごしていくので、当時のいわゆる大日本帝国時代の末端の庶民はこれくらいの温度感だったのかなと思わせるだけの説得力というかリアリティは感じる。

 だからこそ、敗戦のニュースを聴いた時のすずさんの感情の爆発は、心に響いた。すずさんにとっては、日々を感情豊かに過ごす生活と戦争が地続きのもので、そうやって悲しさや怒りの感情を出さずに楽しそうに過ごすことがすずさんにとっての戦争だったのだと、一瞬で反転させて気付かせる演出がすごい。

 あとエンドロールで描かれる、すずさんとおりんさんのならなかったもう一つの未来もじんわりと沁みる。良い映画でした。多くの人に観てもらいたいと思える作品。 

 

 これを反戦映画とか教育的か(小中学生に推奨できるか)というと、小中学校を「はだしのゲン」で育った人間としては、うーんとは思う。はだしのゲンが教育的かという議論は置いておいて(笑) 色々な意図は付加できるけど、あくまで政治的・教育的な意図から離れて観るべき出来のいい映画・アニメ・作品であって、まあ終戦記念日には毎年「火垂るの墓」と交互に放映してもいいんじゃないかなあとは思うなどした。

 

この世界の片隅に
 

 

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

 

  

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

 

  

〔コミック版〕はだしのゲン 全10巻

〔コミック版〕はだしのゲン 全10巻