実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

映画「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」を観た。

 とても良い映画で、同時に愛すべきボンクラ映画だった。

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 この映画自体はイタリア映画だけど、タイトルにも入っている「鋼鉄ジーグ」とは日本の昔のロボットアニメ。国内放送終了後にイタリアでも放送されていて、向こうでの認知度と人気は抜群らしい。

 これはヒーローの映画ではなく、ヒーローになるまでの映画だ。その意味はこの映画を最後まで観たら分かる。主人公のエンツォは小悪党のチンピラで、ケチな窃盗で小銭を得て、ほぼ唯一の楽しみはポルノを見ながらヨーグルトを食べるような生活。そんな主人公はある日、偶然にも「力」を手に入れる。ビルから落ちても死なない頑丈さと怪力だ。

 そんな力を手に入れても小悪党なので、ATMを盗んだり基本的には自分のためにしか使わない。そんなエンツォの前に現れるのが鋼鉄ジーグの熱狂的なファンのヒロインで、主人公の「力」を目撃して、鋼鉄ジーグの主人公(司馬宙・シバヒロシ)と重ね合わせて、主人公のエンツォ「ヒロ」と呼び、何度も何度も「正義のために力を使うのよ、鋼鉄ジーグみたいに!」とことあるごとにエンツォに言い聞かせていく。そんな中で、エンツォが暴走したり間違えたりしながら、自分に宿った力を正しく、あるいは誰かのために使おうと変化していく流れはひとつの成長譚としても面白い。

  ヒロインのエピソードとか、さらっとヘビーな展開も入ってくるので、万人向けとは言い難いですが、それだけにボンクラだけどまっすぐなメッセージ性がストレートに伝わってくるのがいい。ヒロインの語る言葉が声にならない叫びだと分かる展開も、終盤でエンツォが名乗るシーンとか、ヒーローものとか好きな人には間違いなくオススメできる。

 あと敵の造形も良くて(ザ・悪役な顔立ちも含めて)、地元のギャングのボスっぽい奴で、序盤から中盤にかけては主人公と同じく何者にもなれない、鏡写しのような存在として描かれているんだけど、最終的には主人公とは決定的に違ってしまう描写もとても良い。

 全体的には、押さえるべき要素はきっちり押さえられた王道展開で燃えるヒーロー映画であり、自分好みのボンクラ映画であったので大満足。

  

 

 この映画を観ていて連想した過去映画。こっちも観てない人はオススメですよ。 

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