実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」を観た。

 マクドナルドを題材にした映画って「スーパーサイズミー」くらいしか他には知らないけど、もうマクドナルドという企業を題材にした時点で批判性・問題提起がセットと言う感じがする。マクドナルドは超最高!みたいなプロバガンダ映画をもう作る意味もなく、どれだけアンチに叩かれても局所的な影響しか生じないぐらい、インフラレベルの超巨大企業というイメージがある。

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(字幕版)

 この映画は”マクドナルドの創業者”レイ・クロックの自伝的映画だ。主演は「バードマン」のマイケル・キートンで、高齢で野心家という役を完璧にこなしている。目力というか目のギラつき方が本当にヤバくてすごい(誉めてる)。

 “マクドナルドの創業者”とカッコ付きなのは、この映画の話自体がセールスマンだったレイ・クロックがマクドナルド兄弟と出会い、兄弟から「マクドナルド」を奪い、己のハンバーガー帝国を作っていく物語でもあるわけで、マクドナルドがいつから始まったのかという起源のズレと勝者の歴史にも踏み込んでいて、その辺りもヒリヒリさせてくれて良い。

 作中では基本的にどちらにも肩入れせずに、フラットに事実・エピソードを実写化しているんだけど、マクドナルド兄弟の考案した効率化システムが当時は本当に革新的なものだったというのが肌感覚(他のハンバーガー屋のシーンと対比させることで)で伝わってきて面白い。実はこの映画、経営者とエンジニア(職人)の対立の話でもあって、ガンガン規模を拡大させたい経営者と質を重視して保守的になる職人の対比を見てると、フェイスブックの創業を描いた「ソーシャルネットワーク」を思い出す。ソーシャルネットワークもそうだったけど、この手の創業を巡る争いは契約と名誉と裁判の3つが出てきて、最終的には名誉が最も重視される印象。

 全体的に完成度が高い映画で良かった。この映画のキモは、ラストのトイレでの2人の会話に尽きると思う。そこで語られる2人の短いやり取りに、この映画とレイ・クロックの全てが凝縮されていると思う。そこで語られるレイ・クロックの言葉にはある種のサイコパス感もあるし、同時にファウンダーとして最も重要なセンスってそういうことなんだろうなという奇妙な納得感もあった。繰り返しになるけど、マイケル・キートンの演技がすごい。