実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

ミュージカル×クライム=青春。映画「ベイビー・ドライバー」を観た。

 ゴキゲンなBGMと迫力のあるカーチェイスアクションで、80・90年代映画という感じの良作。監督は信頼と安定のエドガー・ライト監督。

ベイビー・ドライバー (字幕版)

 ミュージカルと書いたけど、正確には主人公のベイビーが音楽を常に聴いているので、主人公の行動や感情が楽曲と連動していて、そういう意味でのミュージカルなんですが、このコンセプトがバシッときまっていてすごく良かった。

 とある事情で凄腕のドライビングテクニックを持つ「逃がし屋」として犯罪チームの一員として仕事をこなし、借金返済に追われる主人公のベイビー。この主人公には一癖も二癖もあって、過去の事故から耳鳴りが止まず、音楽で耳を塞いでいるのですが、そこに車の運転が加わると、集中力MAXの凄腕ドラテクドライバーに変身するという設定がクール! 全体的に、細部まで神経が行き届いている丁寧な映画で、丁寧な映画はとても良いという話です。

 特に一番の見所シーンは、仕事前の作戦ミーティング。このシーンは1回目と2回目の仕事で2回あるんですが、この二つの対比が鮮明で面白い。1回目は全てが上手く回っているんだけど、2回目は微妙に歯車が狂っているな、というのが各細部の差異で表現していて、これもとても良いシーンだと思う。

 一番良かったシーンはコーヒーの買い出しシーンが最高に良い。テンション上がっているベイビーが最高にハッピーって感じで。これも対比効果が上手くて良い。

 ベイビーの運転技術とかデボラの過去(背景)とか、語られない部分は多いけど映画のスピード感を重視した結果なので、全然不満じゃない。ラストの逃避行からのケリのつけ方とかも良い。かつてベイビーが夢想していた光景とオーバーラップするシーンとかも良かった。

  監督の味とセンスも光りながらバチッと仕上がってるので何も考えずに観れるので、観て損のない映画としてもオススメ。  

  

 

 あと、ファイトクラブに関する余談。

 作中でベイビーが、テレビ番組をザッピングするシーンがあるんだけど、そこに「ファイトクラブ」のワンシーンが映っていて、「それで何か得したか?(How's that working out for you?)」というタイラーの台詞が出てくる。

 ベイビーは周囲の台詞や音楽をサンプリングする癖があって、その言葉を別の場面で使うんですが、そのシーンも面白くて印象深い。“hat”ってタトゥー入れている人がいて、何でかと言うと元々は“hate”という意味で、ただ依頼が絶えず来るようにという願掛け(my chance of employment)の意味を込めて”E”を取ったって説明をするんだけど、そこにベイビーが「それで何か得したか?(How's that working out for you?)」って台詞を引用する。その返しが「帽子(hat)を嫌う(hate)奴がいるか?」って感じで、ファイトクラブ関連ということもあるけど、気に入っているシーンのひとつ。