実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

侵略する日常。映画「散歩する侵略者」を観た。

 あらすじと予告編が面白そうだったのと同時に、話の展開にはあまり期待していなかったんだけど、後半からラストにかけての展開が意外な着地だったので、全体として自分好みの映画だった。

散歩する侵略者

 

 松田龍平の演技力が抜群に良かった。感情のない宇宙人の、異質感を十二分に発揮している。あと「夫が突然宇宙人になっていた妻」役の長澤まさみも、異質感を受け止めつつ戸惑う演技力も、一人の人間の心の機微を丁寧に捉えていて、目立たないけど地味にすごい。

 侵略者(宇宙人)以外の登場人物にもそれぞれの物語と問題や悩みがあって、それは具体的な悩みというよりは、ぼんやりとした不満や不安を抱えていて、それが直接言及されないものの、それぞれの等身大の不安が挙動や表情の演技に現れているのがすごい。その辺りの演技がちゃんとコントロールされているからこそ、中盤から後半にかけての少しだけの変化が、きっちり差異として伝わってくるのはとても上手いと思う。

 とにかく映画全体の雰囲気が好きで、日常と非日常の混在したドライな世界観がとても良い。リアリティに対するバランス感覚が絶妙で、長澤まさみが宇宙人になった松田龍平と不仲だった夫婦関係を再構築する話がひとつの主題になっているんだけど、ラストの展開辺りで精一杯の背伸びはするけどジャンプまではしない、という地に足の着いた感覚に新しさを感じた。上手くは言えないけれど。あと、台詞回しなんかがどことなく演劇調だなと思ったら、やっぱり舞台演劇が原作っぽい。ラストの展開はちょっと意外だったのも含めて余韻がある。

  さりげなく銃火器も含めたアクションシーンもいくつかあって、恒松祐里という人が割とガチめの格闘アクションをやっていて、見応えがあってとても良かった。

 

 

 スピンオフ作品のこっちも気になったので、そのうち観てみたいと思う。