実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

アウトサイダーの恋。映画「シェイプオブウォーター」を観た。

 アカデミー賞受賞作。限りなく一般向けを装ったニッチ映画だった。最高!

シェイプ・オブ・ウォーター (字幕版)

 話としては「美女と野獣」と「人魚姫」を合わせたようなイメージ。異種恋愛モノであり、またハンディの話でもあって、その辺りがこの映画を一番面白いと思った部分でもある。なんとなく、ハンディについては日本的感覚と欧米的感覚の差があるなあとは感じた。

 日本国内でこういう話を作るなら、身分や種族を超えた純愛! みたいな構成と演出になっていくような感じがする。だけど、この映画はそこに着地せず、もっと踏み込んだテーマになっていて興味深い。

 主人公のイライザは、幼少の頃に負った喉の傷が原因で口が利けなくて、さらにこのイライザには、「美人」という記号が付与されていない。あくまで普通の人、普通の女性として描かれている・・・と思う。個人的にはイライザの顔は割とインパクトあった、板尾創路系というか。

 この映画は美しい映画だけど、純愛映画と呼ぶにはちょっとなあと思っていて、それはイライザが「彼」という庇護すべき「下」を見つけただけ、という風にも取れる撮り方をしている辺りが絶妙で良い。

 あと、この映画の面白い所は、様々なシーンで漂う感情を赤と緑の2色で効果的に表現している所。主人公のイライザの場合、序盤では憂鬱な感情としてグリーンが表象していて、制服の色も、クソ不味いパイの色もグリーンだ。逆にレッドは喜びや生命力のようにポジティブで、主人公のイライザが半魚人の「彼」と交流し始めてから、段々と画面に差し込まれていく赤い色彩がとても鮮やか。表現されている感情はシーンによって色々なニュアンスを含んでいて、夜や研究施設などの全体的に暗い画面に映える色彩が印象的で良かった。

 良い存在感を出しているのが、研究所の管理人であるストリックランド。この人は主人公のイライザと対を成している存在だと思っていて、ストリックランドがイライザに対して抱いている感情(欲望)って、本質的にはイライザが半魚人に抱いている感情(欲望)と同じ気がしている。 イライザがマイノリティ(アウトサイダー)として描かれるように、ストリックランドも序盤は「まともな」人間として対比的に描かれているし。あと、この映画は「彼」と出会ったイライザの人生の道筋を中心に描かれているけど、「彼」とイライザの存在によって、立ち位置とアイデンティティが揺さぶられ続けるストリックランドこそがある意味では本当の主人公だと思う。この作品の中で常人(普通)であり続けようとした存在で、イライザの敵対者として描かれているものの、作中でストリックランドの立ち位置がどう変化していくかを追っていくのも、この映画の見所のひとつだと思う。

  他にも良かったシーンは色々あるけど、記憶がちょっと曖昧になってるので、もう一回見直して、改めて感想書きたいなあ。