実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

映画「ソロモンの偽証 前篇・後篇」を観た(ネタバレあり)。

  ネタバレなしの感想の記事はこちらから。

 

ippaihaten.hatenablog.com

 

ネタバレ感想は以下の「続きを読むから」どうぞ。主に後篇の話をつらつらと。

 

 

  • 法では裁けない自分を断罪させるための学校内裁判というオチは、なんとなく前篇で想像していたものの、収束の仕方は説明足らずの部分は少しあったものの(原作読めってことだろう)良かったと思う。
  • 大出(不良の被告人)が、学校内裁判を開く原因ではあったものの、柏木の自殺と完全に関係なかったのはやや予想外。大出の父親が保険金狙いの放火したということが明かされるけど、祖母死んでいるのはもやっとした。というか大出とつるんでいた2人に証言させれば良かったんじゃね?
  • 警察は大出のアリバイを詰めてないといった捜査ミスはあったのかもしれないが、柏木は自殺だったし状況証拠的にも自殺だったし判断は結果として妥当と言う気もする。故意に落とされたか落ちたかは分かるんじゃないの? 柏木は素手だったし屋上の扉のドアノブの指紋とかで。その経緯と判断に主人公たちが「納得」できなかっただけで。
  • 作中でも言及されていたように、学校内裁判は罪を確定するための実際の法廷ではなく、これは藤野と神原含む2-Aの生徒が納得し、前に進むための裁判。それを忘れるとオチがよく分からなくなるし、意味不明になるだろう。
  • だからあの終わり方は、その前の台詞「友達になりました」と合わせて唐突に感じるかもしれないが、全員が納得した結果だからあれでいいんじゃねえかなと肯定的に自分は捉えた。
  •  神原(他校生の弁護人)が嘘を言っていたと藤野(主人公の検事)と気付き疑念を抱くようになるが、真相を神原が話した時「自殺した翌日ニュースで知った」と言っていたので言葉上だと嘘ではない。その時の会話の流れでは告発番組を見たというニュアンスに受け取れたから嘘なんだけど。藤野の誤解が真相の鍵になった、というのは面白い。
  • 神原が犯罪者の息子という過去に向き合うのと、藤野がいじめを見ない振りしていた過去と向き合うのは柏木の「口先だけの偽善者」という言葉なのだけど、それでも生きて前に進むことを選んだという流れは好きだ。藤野は過去の後悔を糧に未来へ向かおうと決意するし、神原は過去の中にも忘れてはいけないものを見つけて未来へ向かって生きていくことを決意した。
  • 前篇で藤野が半年前に自殺しようと線路へ踏み込む自分を幻視するシーンは、少し鳥肌が立った。
  • 真相が明らかになった時、自殺した柏木のしょうもなさと幼稚さだけが際立っていて、でもそれは中2の特権だろうし、迷惑ではあるがそれ自体が悪いわけではないけどなあ。
  • 口先だけの偽善者、という言葉から中谷美紀の「砂の果実」を連想した。「弱虫の偽善者」って部分から。映画観た後に聴いてみると、この曲聴きながら書いたと言ったら信じてしまいそうなくらい歌詞がマッチしている。藤野・神原・柏木のそれぞれの視点からそれぞれに向けて歌っているようで、私的「ソロモンの偽証」主題歌に決定した。

Pure Best

  • 自分の感想を一言で言うと「しょうもない奴の一言で心がズタズタにされたり、自分の隠していた醜い部分が露わになってしまっても、それでも人は、その相手にではなく、自分に向けられたその言葉を糧に、その言葉に対して誠実に回答を求めることで成長していくんだなあ。素晴らしい」。

 

  あと前回の記事で書き忘れていた話で、ネタバレという話ではないけど、細かい話。時代設定が1991年なのに街並とか背景があまりに現代なのは気付くとテンションが少しだけ下がる。セブンイレブンの店内でナナコポイント2倍のお知らせがあったり、商店街に大乱闘スマッシュブラザーズの看板があったり、自販機にペットボトルが見えたり。ぼやかしていたし、気が付く方が悪いのだが、少し気になった。

 

中谷美紀の「砂の果実」はここで一部視聴できます。

クライマックス~J-バラード・スタンダード

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ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)

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