実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

神は死んだのかは分からないけど、無神論者は死ぬべき映画「神は死んだのか?」(後半部ネタバレあり)

 久々にとんでもない映画を観てしまった。ツタヤで連れが借りてきたのを観たのだけど、中盤から「んんんっ???」となって、終盤で「ああっ・・・!」となんとも言えない顔になる映画だった。 

神は死んだのか [DVD]

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  一言でいったら宗教プロパガンダ映画で、もう一言いえばL・○ンターレ系の実写版映画みたいな(婉曲的表現)。

 観終わった後に早速検索してみたんですが、ウィキペディアに記載がない(2015年10月現在)のが既にヤバい気配を漂わせている。

 あらすじは 、無神論者の大学教授とクリスチャンの青年が「神はいるか」について知的な議論(バトル)をするという触れ込みだが・・・。構成としてはクリスチャンの青年以外にも、意識高いジャーナリストの女や、ユダヤ人の女子大生や牧師やらの視点でもそれぞれの物語が交互に進んだりする。

 ニュースボーイズというバンドが出演しているので、ファンなら観て損はないのかもしれない。 

God's Not Dead

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  この映画に限っては別に配慮しなくてもいいと思うが、以下、この映画のブッ飛んでいる所について書く。一応ネタバレなんで「続きを読む」からどうぞ。

 この映画の一番ひどい所であると同時に、最大のテーマであるのは無神論者は死すべし」というメッセージだ。この映画には何人かの無神論者が出てくるが、最終的にはガンになったり、車に轢かれて死ぬ

 話の主軸である無神論者の教授の話をしよう。

  • 無神論者の教授は元々、神を信じていたが、子供の頃に母親が死んだので神はいないと思った。だから無神論者になった。
  • もちろん大学の自分の講義内(たぶん哲学科)でも無神論を肯定する。ちなみに教授の奥さんはクリスチャンで、教え子に手を出して結婚してる。
  • 主人公が自分の無神論に反論したからムカついたので、神はいるって証明してみせろと無茶振りし、主人公の主張に徹底的に反論する。反論の根拠は宇宙物理学の権威であるホーキング博士が言っていたからだ、とか進化生物学の権威リチャード・ドーキンスが神はいないと言っていたからだ、という偉い人が言ってたから正しいメソッドのみ
  • 教授という地位からのパワハラ(単位やんねーぞ)と論拠が権力のみという、反論にもならない反論を重ねた結果、有神論者の主人公に過去のトラウマを吐露させられ、「神を憎んでいる?」→「ああ、憎んでいる」→「存在しないものは憎めないから、神はいるでしょ」という、スレッスレの論法で教授を言い負かした感じになる。その後、多数決で圧倒的に敗北し、神はいることになった。
  • 色々とすれ違いがあって愛する妻も家を出てしまい、主人公にフルボッコにされてボロボロになった教授は、母との思い出を回想する。そして、たまたま目に入ったチラシを見て、家を出た妻がそこにいると思ったのか、突然回心したのか、クリスチャンバンドのニュースボーイズのライブ会場へ向かう。そして、ライブ会場へ向かう途中で車に轢かれて死ぬ。たまたま通りすがりの牧師(作中の合間に何度も出てくる)に、「大丈夫、先に神の国に召されるのは幸せなことだ」と言われるおまけつきだ。無神論者はとりあえず死ぬべきだし、途中で回心しても死ぬけど、先に神の国に行けるから幸せだね。よかったよかった。

  他にも、教授の奥さんの母親が認知症でずっと無言なんだけど、終盤で突然神の啓示を饒舌に語りだしたり、奥さんの兄が捨てた無神論者のセフレが癌になったりするけど、まあいいや。

 

 主人公の挫折として、序盤で教授に将来の夢を断たれるかもしれないとか、彼女(非クリスチャン)に振られるなどのシーンが描かれるが、彼女の言い分が圧倒的にまともすぎて、主人公の不幸・挫折として描くのに失敗しているのもポイントのひとつだ。

 

 あと、巧拙はともかくとして、主人公と教授のディベートをジャッジする陪審員役の学生たちは、終盤で主人公の主張に共感したのか、教授の反論の脆弱さに気付いたのか「神はいます」「神はいます」「神はいます」と次々に有神論に賛意を示して立ち上がるのだが、最終的に全員立ち上がってしまう。洗脳でもされたのか?と思いたくなるぐらい一色の意見で、おいおい、せめて8・2くらいに意見が分かれるぐらいの演出にしてやれやと思った。自分の頭で考えた結論じゃない感が満載である。最高学府の学生とは思えないくらい知性の低さのみが際立つ。でも仕方ない。神は圧倒的勝利しか望まないから。

 

 最後に、ラストのラストでずっこけたシーンだけは触れておきたい。ニューボーイズの演奏が流れるんだけど、メンバーが突然「神はいる、ってメールを知り合いに送ろう!」って言い出す。当然のように、ライブ会場にいた観客は全員メールを送り始める。チェーンメールサイバー攻撃並みである。そして、画面は暗転し、テロップが浮かび上がってくる。この映画を観ている俺たちへのメッセージだ。そこにはこう書いてある。「さあ、君もこの素晴らしいムーブメントに乗って、メールを送ろう」

 ねーよwwwww もうね、草しか生えないわwwwwww しかしこれはライブ会場=ノアの方舟であり、ムーブメントに乗り遅れた無神論者は車に轢かれて死ぬしかないので仕方がない。

 

 ちなみにソフトについては、現在(2015年10月)ではBlu-ray版はなく、DVDしかリリースされていない。神の実在を信じる者はBlu-rayなんかよりDVDを観るべしという強烈なメッセージ性を感じる(嘘)。

 

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