実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

風立たぬ映画「永遠の0」を観た(後半ネタバレあり)

 上映当時もあまり興味はなくて「これ観に行くなら『風立ちぬ』をもう一回観るわ」とか好き勝手言っていたこともあって、たぶん観る機会のない映画なんだろうなあ、と思っていたんですが、この前ふとしたきっかけで観ることになった。原作は未読。 

 感想。本筋はイマイチだったけど、ネタ映画としてとても自分好みの映画だった。良くも悪くも「風立ちぬ」と対になる映画でもあり、零戦を通して戦争と、それに関わった人間を描くという手法は同じだけど、視点が全く違うので見比べる価値はあるかなあ・・・。

 岡田准一が主演の回想(戦時中)パートは、岡田准一がずっとヘルメット被っているか、ものすごいやさぐれているかのどちらかなので、印象としてはかなり薄い。ただ戦闘機のシーンとかは良かった。ただ、ちょっと画面(海とか空の色)が現代チックというか綺麗すぎる気もした。あと当時の戦闘機であんな綺麗な赤い炎が上がるもんかいな、という感想が浮かぶのは、明らかに「風立ちぬ」の影響である(実際はどうなのか知らん)。

 三浦春馬が演じる現代パートは、正直必要かなあと思っていたけど、ラストでその感想が完全にひっくり返った。三浦春馬がアレなのは中盤の合コンシーンでもその片鱗は見せていたし、本来はそういうシーンじゃなくて人生が交錯する感動シーンなんだろうけど、それまでの積み上げが雑過ぎて、変な笑いが浮かんでくる。

 自分がこの映画で印象に残っているシーンを3つ挙げるとしたら、合コンでの三浦春馬の逆ギレ(動画参照)、ヤクザの親分に抱きしめられて「俺は若い男が好きだ」と言われる三浦春馬、そしてラストの三浦春馬だからね。作中において三浦春馬の存在はいらないと思うけど、自分がこの映画を最高に楽しめたのは三浦春馬のおかげ。


The Eternal Zero - Yuki Furukawa 古川 雄輝

 ラストの岡田くんのシーンは、なんか表情に違和感があったんで、なんだかモヤモヤしたまま終わってしまった。一番の盛り上がり場面なんだけど、その前の三浦春馬の演技が完全に持って行っちゃっているもの。これは本当に厳しい。「風立ちぬ」の話ばかりで申し訳ないが、あまりにモヤモヤしたので、あのラストシーンに「風立ちぬ」のラストシーンを繋げると、なんかいいシーンっぽくなるので、脳内補完により最終的な帳尻を合わせることにした。

 

以下ネタバレ感想という名の三浦春馬の演技に対する感想。

  • 合コンのシーンは本当に何度も観返したくなる痛々しさを放っている。同級生はみんな就職してスーツ着てるんだけど、司法浪人中という名のニートである三浦春馬だけダサい私服で登場する所から始まり、特攻隊のことを調べている話題からドヤ顔&ドヤ語りをするも、周りからは「お前は単に現実逃避してるだけ」「それよりも就職しろ」「その話、ちょっとついていけないんですけど~」という正論の数々を突きつけられ、やがて逆ギレして出ていってしまう。お前、何しに来たんだよ感しかない。
  • 一応フォローすると、過去に対して無関心な現代の若者たちとか、三浦春馬の変化とか色々と対比させたい(と思われる)シーンなんだけど、結果として失敗しているのが悲しい。他にも、同級生たちが合コン前の作戦会議で女の子達をハワイに連れ出そうと計画しているんだけど、たぶん娯楽地としてのハワイ≒死地としての真珠湾、的なニュアンスを出そうとしていたかもしれないが、伝わってくることはない。少なくともこの映画においては、そういう細かい対比はいらない。他の映画だったらちゃんと細かい所でも重ねてきているなあ、という感心ポイントになりうるのだけど、本筋がヨレヨレだと完全に逆効果である。
  • 合コンから逆ギレ離脱した後、ヤクザの親分の家に突入して、祖父の話を聞くことになるんだけど、そこで祖父のルーツを辿る上で重要な書類を手に入れるわけです。そして、突然ヤクザの親分に抱きしめられて「俺は若い男が好きだ」と言われる。
  • このシーンも戦争を生き抜いた若者(ヤクザの親分)と現代の若者(三浦春馬)を結ぶ奇妙な縁とか、祖父の存在が繋いだ絆みたいなものを描いていて、とても良いシーンのはずなんだけど、上記のシーンから一転して激しい雨の中、親分の屋敷の前でずぶ濡れになって呆然と立ち尽くす三浦春馬の姿が。何があったのか。
  • 実際の流れとしては、①謎だった祖父のルーツが書かれた調査資料をヤクザの親分に渡される。②資料と同時にこれまでの自分の思いを託すように三浦春馬を抱きしめる親分(&若い男が好きだ発言)。③託された資料を見て呆然とする三浦春馬。あまりに衝撃的で雨の降りしきる中で立ち尽くしてしまう。なのだろうと思う。
  • しかし、実際には託された資料を見て驚く春馬のシーンが省略されているので、資料と引き換えに若い男が好きなヤクザの親分にアーッ! されてしまい呆然自失の三浦春馬(事後)としか取れないような繋ぎ方になっていて、これは高度なギャグなのかもしれないと思った。
  • そしてラストで祖父の想いを追体験した三浦春馬が突然、街中で絶叫するんだけど、今までのこと(ニート&アーッ!)を踏まえると、ついにおかしくなったとしか見えないのが悲しい。本当は当時の祖父の思いを知って、感極まるシーンなのだけれど。
  • そして現代の街中に突然現れる零戦。そこに乗っているのは三浦春馬の祖父こと岡田くんだ。一瞬の交錯。戦争を生き抜くことのできなかった祖父の想いが現代を生きる春馬へと繋がった瞬間で、普通なら感動できるシーンなんだろうけど、おかしくなった三浦春馬が幻覚を見ているシーンにしか見えなくて辛い。
  • 自分にとっては完全に三浦春馬による三浦春馬の映画だったが、最後にマジメな感想も少し言うと、最後の、零戦特攻する岡田くんが微かに笑うのはすげー違和感。未来を思って笑ったのだとか、色々な解釈はできるけど、自分にとってはなんかピンとこなかった。それだけ。

 

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