実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

絶望としてのウェスタンと次世代への希望の、圧倒的なグルーヴ。映画「LOGAN/ローガン」を観た。

「グレイテストショーマン」がとても良かったので、ヒュー・ジャックマン繋がりで観てみた。「ウルヴァリン」シリーズの完結作。

LOGAN/ローガン (吹替版)

 「ウルヴァリン」シリーズは全部観た訳ではないけど、全く観ていなくても楽しめると思う。X-MENとミュータントという作品設定、あとはウルヴァリンとプロフェッサーXというキャラクターを知っていれば、なお良し。

 感想。自分好みの話でとても良かった。ミュータント版「グラントリノ」であり、メキシコ版「マッドマックスFR」みたいな。ヒュー・ジャックマンウルヴァリン卒業作のせいか、話の要素が色々と詰め込まれていて、軽く映画2本分くらいの話の密度になっていたのが面白くて、自分にとってはとても良かった。ただ、そこがゴチャゴチャして話が散漫で分かりにくいという意見も分かるし、その辺りの捉え方で、この映画の感想は結構変わってくるような気もする。

 この映画は本当に色々なテーマを詰め込み過ぎていて、たとえば介護問題、加齢問題、父親同然の存在が失われることを受け入れられない息子の葛藤、突然現れた娘に対する父親の自覚と葛藤、次世代への継承とかエトセトラ。ひとつひとつだけでも映画と成立させられるのに、一つの映画でやってしまったことによる、密度の高い謎のグルーヴ感が良かった。いや本当に、精神的に父親離れできていない男の自立と、いきなり現れた(紛れもなく自分の)娘に対する葛藤と父性の芽生えを、同じくらいの密度で同時に、同じ人間(ウルヴァリン)でやろうとしているからね、駆け足かもしれないけど、そりゃあ面白くなってくる。娘であるローラ役のダフネ・キーンが表情も演技も良い。その上、ウルヴァリンのお株を奪うようにアクションシーンもキマっていて、とても良かった。ヒュージャックマンも後半は敵としてもかなり動くので、アクション映画としてもちゃんと楽しめる。

 そして、これは紛れもなくウェスタン映画なんですよ。新しい時代の兆しと、それに取り残された・古い時代の流儀に殉ずることを選んだアウトロー(ミュータント)の話。プロフェッサーXを代表とする古き良きX-MENの時代は古びたコミックとして消費され、その絶望に折り合いをつける(別れを告げる)話であり ローラを含めた次の新世代ミュータント達に未来への希望を継承していく話。

 ウェスタン映画「シェーン」から↓の辺りの台詞が、何度も繰り返し引用されているし、ウルヴァリンの衣装とか、馬のエピソードとか、完全にウェスタン映画を撮ろうとして撮っている構図すぎる。

 ちなみに「シェーン」の台詞はこの辺り。ネタバレかどうか分からないけど、一応原文で引用。作中で改めて使われると、ウルヴァリンとローラの関係性もあって、より深みを持った台詞として聞こえてくるので面白い。

A man has to be what he is, Joey. Can't break the mould.

Joey,There's no living with a killing. There's no going back from one.

Right or wrong, it's a brand. A brand sticks.

There's no going back.

Now you run on home to your mother, and tell her...

...tell her everything's all right and there aren't any more guns in the valley.

シェーン HDリマスター [Blu-ray]

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 まさかミュータントもので、現代あるいは近未来でのウェスタン映画として仕上がっている独特の映画なのでオススメ。