実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

神なき世界の不快感。映画「マザー!」を観た。

 ダーレン・アロノフスキー監督。これはものすごい映画で、個人的には今年のベスト上位に入る映画だった。日本での劇場公開が見送られたという話も納得だけど、とても面白かったのも事実。

マザー! (吹替版)

  この映画観た後、すぐに感想書こうと思っていたんだけど、この映画の内容を思い出そうとすると何だかモヤモヤするなあということを何度か繰り返していて、しばらくしてそれが不快感だ、とようやく気付いた。

 そんな風に、自分にとってはエネルギーを使う映画だったんですが、その反面すごく面白くて、色々考察したくなる謎を秘めた映画でもあって、去年観た「哭声(コクソン)」を彷彿とさせる感じ。

 この映画の序盤から中盤までは「ファニーゲーム」を彷彿とさせるような、正体不明の人達に家や夫婦関係にまで侵入されていく生身の不快感がちらつきながら、同時に観客に違和感を抱かせるというか、現実と妄想が入り混じるダーレン・アロノフスキー流の不思議なカットを挟みながら話は進むんですが、その生々しく現れてくる不安や幻覚を主人公のジェニファー・ローレンスがシンクロ率120%で演じていて、こっちまで不安な気持ちになってくる(笑) そして、どこか謎めいた旦那が大事にしている結晶を侵入者に割られてから、だんだんと雲行きがおかしくなり、映画の中でも緊張感が増してくるのは本当に助けて! という感じ。

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 ところが主人公の妊娠が発覚して、事態は一時は平静化して、旦那の執筆(詩人?)が進んで本が出版されるし、良い事ばかりで家の中が幸せなムードに包まれるも、それも束の間。後半は現実と悪夢寄りの空想が入り混じった混沌とした世界観にいきなり叩き込まれて、主人公と一緒に混乱し続けながら悪夢から逃げ続け、そして怒涛&衝撃の展開に・・・。

  いや、本当に凄いわこの映画。なんとなく作中で起こる事態が象徴的のようで、そうでないようなラストで、ちょっと教養を求めるタイプの映画で万人受けは確実にしないと思うけど、それでも面白い映画だった。「ノア」の時もそうだったけど、キリスト教というか聖書をさらりと知っておくと、この映画をより一層楽しめると思う。

 この映画でも、もちろんダーレン・アロノフスキー流のカメラワークは健在で、総じるとダーレン映画という所はブレていないんだけど、この映画は「レクイエムフォードリーム」であり、「ブラックスワン」であり、「ノア」なんですね。だから、どこか不穏な気持ちにさせてくれるけど目が離せないダーレン映画なんだけど、ふとこの映画と上記の3作は「神がいない」ということがテーマになっているんじゃないか、とそんなことを感じた。神というか救いというか、「ノア」でキリスト教をテーマにし始めたんじゃなくて、元々キリスト教や神をテーマにし続けてきたんじゃないか、とか思ったり・・・この話はまた別にまとめて書きたい。ちなみに「レスラー」は元々、現代のキリストを主人公にした映画だから(異論は認めない)!

  

マザー! (字幕版)
 

  

  なんとなく見返したくなったダーレン・アロノフスキー映画。

  

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