実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

映画「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」を観た(後半は原作既読者にはネタバレ)。

 漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の第4部「ダイヤモンドは砕けない」を実写映画化。第4部映像化はジョジョの話をすれば一度は出てくる話題であり、アニメ化したりのジョジョ人気からもいつかやるとは思ってた作品がついに実写化。

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章 スタンダード・エディション [Blu-ray]

 

 感想。この映画単体としては思っていたよりもずっと良かった。けれども、ジョジョという原作に対してどうポジションを取るかについては、期待と想定は超えなかった印象。ちなみに原作既読で、一番好きなのは第6部と第5部です。

 この映画の良くなかった所は色々な方面に気(リソース)を使い過ぎて、映画自体の良さが目立たなくなってしまっている所。その色々な方面って何よと言うと、「第四部ファン」「原作ファン」「映画の続編を期待している身内(スタッフとスポンサー)」辺りだと勝手に思っている。

 ジョジョの人気は確かにあって、先に第4部がアニメ化してたり、今は第5部のアニメが放送してるけど、どこまでの人気と知名度を前提にするかで、話がだいぶ変わってくる。それはこの映画を、曖昧としたスタンドの概念や原作を既知の人達に向けて作ったのか、ジョジョ未見の人でもその世界観を楽しめるように作ったのか、あるいはその両方に向けて作ったのか、よく分からなくなっているとは感じた。実際は、両方に向けて作った&続編制作を想定して脚本化した結果だと思うけど、その中途半端さが悪い方向に出た。

 個人的には劇場版としてのまとめ方はシンプルで好感なんですよ。尺的にも導入的にもアンジェロと虹村兄弟は外せないし、この映画はそこまでだと潔い割り切り方で。この構成なら、ジョジョ初見の人にも「悪人がいて、何らかの目的を持った黒幕がいる」とシンプルで分かりやすいと思った。欲を言えばレッドホットチリペッパーも観たかったけれど、話が確実にややこしくなるだろうし、まあ仕方がない。キャストは各キャラの個性が出ていて良い、本編だとあまり目立たないけど地味に良いキャストだと思う。スタンドとアクションも見所はあったし。

 スタンド自体に関しては、主人公のスタンド「クレイジーD」が能力的に万能で複雑な反面、あまり目立たなかったりするのは(そこが良さでもあるとは思うが)、まあ仕方がない。康一の「エコーズ」も能力が複雑だしACT3までショートカットするんだろうな・・・というのも仕方ない。全体的にスタンド能力の説明が割と投げっぱになっているのもまあ・・・と省略するのは分かるけど、ファンも初見の人も誰も得をしない省略な気がするのは良くない。

 あと気になったのは、自分が第4部の妙味だと思っている「日常と非日常の同居感」をどう料理したかって所なんだけど、そっちの方向には行かなかったという印象。エンドロールでは続編の存在も匂わせているんだけど、本作の配置から推察するに、レッドホットチリペッパーは出てこないし、ラブデラックスも出てこない。露伴と重ちーは出てくるけど、パイツァダストは出てこない、そんな感じだと思う。原作やファンに気を使った構成でジョジョファンとしては最適解だとは思うけど、 中途半端な優等生っぷりで新しさがあまりなかったのは残念だった。 

 

ジョジョの奇妙な冒険 第4部 モノクロ版 1: 18 (集英社文庫―コミック版)