自分のツボに大ヒットした映画だった。宣伝でも触れているように、まさにメキシコ版「パルプフィクション」というテイスト。短編を繋ぎ合わせたようなスタイル/低予算と脚本(構成)の妙/荒削りの中に光っているシーンも多々ありの、チープさも含めたザ・映画でとても好き。 タイトルの「LOW LIFE」はスラングで「底辺の人間」くらいのニュアンス。
とにかく面白かった! 全体として4章構成となっていて、「怪物(モンストロ)」「悪魔」「ならず者」「無法者」の各章で主役が変化していく。メイキング見てたら脚本家も複数いて、それぞれの章を担当しているというリレー方式のようで、それが人間の感情の機微の揺れに上手く繋がっているように感じて、なるほどなあと納得する部分もあった。
この映画に出てくるどの人物も、クズで底辺の人生と一言で言い捨てるのは簡単なんだけど、それぞれにコンプレックスやら環境やら本人にとっての理由があり、どこか情けなくて馬鹿馬鹿しくて、人間の人生を感じてしまう。
主要な登場人物は
・偉大なる父を持ちながら、売春組織の一員である現状に何もできないコンプレックスを抱えた覆面レスラー。
・覆面レスラーの妻で妊婦でヤク中のケイリー。
・元アル中で今はモーテルを夫婦で経営しているが、旦那がガンで移植に必要な臓器を闇ルートで手に入れようとするがとんでもない事態になっていき苦悩するクリスタル。
・クズの友人の身代わりにムショに入り、その間に彼女を寝取られて服役中に鉤十字の顔面刺青が入ったランディ。クズの友人キースは絶賛トラブルに巻き込まれ中。
とプロフィールだけでお腹いっぱいになりそうなローライフな面々。
そんな登場人物それぞれが、この映画の中で見せた――噴き出したと言った方が正確かも――「正義」が、観ていて胸を打った。その瞬間、その本人だけにとっては紛れもない正しき行為という意味での「正義」。
OPの密売臓器のシーンはドン引くけど、全体的に脱力一歩手前の空気で面白い傑作なので、かなりオススメ。
ここからはちょっとだけ終盤の内容に言及するけど、
終盤に「レガシー」と吼えて子供を抱えて逃げ出した覆面レスラーが見せた「正義」はコンプレックスの爆発と昇華を感じてとても良かったし、我が子にではなくランディに託したという流れと、それを引き継いだランディの行動もスゲー最高に良かった、本当に。ランディ! イェェェェェ! 良かったな、顔面刺青の件も解決だ! って感じで(笑)