実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

映画「劇場版おいしい給食 卒業」を観た。

 個人的超大人気ドラマシリーズの劇場版第2作。上映開始直後に映画館で観たんだけど、上映している映画館が近所になかったので、電車で90分くらいかけて観に行った。前作はコロナの関係もあって映画館で観れなかったので、今回は映画館で観れて良かった。公開から日が経っていないのもあってか、一番小さいハコでも6割くらい入っている体感で、家族から小中学生・老人まで幅広い客層の印象があった。公開から日が経っていないのにパンフが品切れだったのも驚いた(後日、別の映画館で購入)。

 面白かった! この作品のファンとしての感想はそれに尽きる。「あいつ! ブドウ糖を作っているのか!?」「食を分けるということ、これはもうつまり配偶者です」などのパワーワード(台詞)もあった。何はともあれ、今回で甘利田先生と神野君の戦い(?)は終結して、文字通り卒業。実質的なテーマとしては卒業というよりも、おいしくない給食あるいはVS栄養士という感じだった。

 今回の給食パートはそんなテーマ的な部分もあって、全部がカタルシスという訳ではなかったが、導入部の一食目、違和感の試食パートからの対比的な二食目、そしてパーフェクトなラスト給食という構成だった。ラスト給食は1(TV版)のラストと重ねるようにカレー銀シャリというのも趣深い。あと1回目の給食パートで生徒たちのナポリタンの話に突然大声でカットインしてきたりして、完全にリアルの事象ということが証明されてしまった。※注釈として、TV版の2の時点で甘利田先生の奇行がバレているということがバレていたんだけど、1のTV版・劇場版ではまだ甘利田先生の精神世界というかイマジナリー奇行の可能性が残っていたのだ。

 舞台が80年代という設定ということもあり、試食の時の変装(私服)もアメカジのサングラススタイルで80年代っぽさと同時期に上映されていた「トップガン」ぽさもあった。あとはウイスキーボンボンの2日酔いで見せたキレッキレの酔拳や試食会場からの脱出アクションなど甘利田先生役の市原隼人のアクションも堪能できる。

 ストーリーの本筋はまあザルガバなのは否定しないけど、この映画はそこが焦点じゃないのはこの作品を追いかけてきた人間なら自明のことで、卒業式のシーンも描かれないのは驚いたし(片付けのシーンのみ)、全体的に甘利田先生以外の登場人物はバックボーンが薄いし、それは同時に先生の視点でもある。基本的には給食以外に、あとは神野君についても給食と教育学科(常節高校への進学)くらいしか関心がない。

 やはり一番の見せ場はラストシーンで、放課後の教室での空気、2人の会話のリズム、ファンにとっては最高にエモくて全てが良い。先生へのリスペクト、神野へのリスペクト、志望動機の「バレバレだ」には思わずニヤリとしてしまう。同じ給食道を進むが、神野君の野望に目を細める先生の表情とか、先生から神野君への贈り物であるロールケーキは、1のTV版での冷凍ミカンのアンサーになっていて全ての歯車が嚙み合ったラスト給食だったのを改めて感じる。

 あと今回はほんのりとキューピットにもなっていて、神野君教育実習生編の他にも甘利田先生北海道編の可能性も匂わせてくれてありがとうという感想。地味に2のTV版ラストのイカ飯が伏線になっていたな、そういえば。あと甘利田先生が勤続12年ということもさりげなく分かった。

 まあ全体的に素晴らしいまとめ方で、まさに卒業という感じ。ラストのラストシーンである中学校の校門の前で「じゃっ」みたく互いに振り返ることもなく、それぞれ反対方向に歩いていくシーンが本当に良かった。