実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

いいから黙って「五大湖フルバースト」を読むんだ その1

  

  

 西野マルタが描く「五大湖フルバースト」は、骨太かつ肉厚な漫画である。絵のうまさではない。ストーリー展開のうまさでもない。そういったテクニカルな部分ではなく、絵の力と物語の力ががっぷり四つに組み合った、漫画としての面白さがそこにはある。

 

 この上下巻の漫画は副題に「大相撲SF超伝奇」と銘打たれている。一見して一発ネタの色物漫画に見えるが、実際にはそうでもあろう。だが、それを色物だけに留めていないのは、大相撲・SF・伝奇を作品の中でそれぞれ消化しつつ、そこから先へと押し出しているのは、西野マルタの漫画家としての足腰なのである。

 

   その相撲SF漫画三部作(トリロジー)の第二部「技の横綱」編にあたるのが本作「五大湖フルバースト」である。三部作と言っても順番は特に関係なく読める。第一部「体の横綱」編である「両国リヴァイアサン」も「五大湖フルバースト」の下巻に収録されているので後々こちらも紹介したい。

 

 なんか長々となってしまったが、本編に入る。あらすじは 二人の力士の立ち合いから始まる。

 

 アメリカ合衆国の国技となった大相撲 。相撲の聖地デトロイトで、伝統の四十八手に新たな一手を加える四十九手目「デトロイトスペシャル」を使う無敗の力士がいた。

 

 その名もデトロイトの英雄、技の横綱(グランドチャンプ)、五大湖

 

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 対するは伝説の横綱

 

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 互いのやり取りの中にこの立ち合いが因縁の一番、再戦であることが仄めかされている。

 

 二人の間にある因縁とは一体・・・という謎を抱かせつつ、物語は過去へと遡って行くという展開。

 

 

 

 かつて史上空前の200連勝を達成し技の横綱と称えられた五大湖。だが今は謎の奇病にかかり、立って歩くこともままならない。誰から見ても、力士としての生命は終わろうとしていた。だが五大湖だけはその事実を受け入れられなかった。

 

 もう一度土俵に立ちたい。そのためになら悪魔に魂を売ってもいい――。

 

 家族を顧みず、全てを相撲に捧げてきた五大湖 に残っていたのは執念だけだった。そこに現れるはドクターグラマラスと名乗る謎の女。女は科学に魂を売れば、五大湖の身体を「直せる(リペア)」と言う。

 

 そして一年後、科学に魂を売りその身体を鋼鉄に変え、五大湖は前代未聞のロボット力士として角界にカムバックする。

 

 しかし、その取組みはかつてのものとは全く別次元のものだった。これはもはや技(テクニック)の横綱ではなく、技術(テクノロジー)の横綱だ、とドクターグラマラスは叫ぶ。それはもはや相撲ではなかった。人と人が力を比べ合う相撲ではなく、土俵の上で兵器が暴れているだけのものだった。だがその力は圧倒的で、かつての五大湖同様に土をつける者は、五大湖を止める者は誰もいない。

 

 このままでは伝統ある相撲が、技術兵器としてカムバックした五大湖によって終わらせられてしまう――。

 

 そんな中、角界の危機を救うため、石像から復活した伝説の横綱

 

 大相撲の運命を賭けて、横綱同士の対決が、横綱五大湖の闘いが今始まる! 

 

 

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五大湖フルバースト 大相撲SF超伝奇 上 (シリウスKC)

五大湖フルバースト 大相撲SF超伝奇 上 (シリウスKC)

五大湖フルバースト 大相撲SF超伝奇 下 (シリウスKC)

五大湖フルバースト 大相撲SF超伝奇 下 (シリウスKC)