実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

童女・悪女・百合。映画「お嬢さん」を観た。

 去年(2017年)にこの韓国映画がすごい!みたいな感じでいくつかの映画館で、2週間ずつくらいの交代上映でプッシュされていた3作があって、それが「アシュラ」「哭声/コクソン」「お嬢さん」だったんだけど、前2作は少し前に観てたが、ついに3本目の「お嬢さん」を観ることができた。

お嬢さん(字幕版)

  メインの登場人物はシンプルに3人で、富豪の娘である「お嬢さん(秀子)」、お嬢さんと結婚して富豪の財産を奪おうと企む「詐欺師」、詐欺師の片腕的存在で詐欺師のサポートとして屋敷にメイドとして潜入する「珠子(本名はスッキ)」。

 ストーリーは3部構成となっていて、第1部はメイド(珠子)の視点、第2部でお嬢さん(秀子)の視点(回想含む)の話で、1部と2部は同じ時系列の出来事をそれぞれの視点で描いていて、第3部でその後の展開を描いている。

 感想。面白かったんだけど、全体としてはボヤっとした印象があった。エログロ耽美みたいな雰囲気は良かったけど、第3部の朗読シーンとかは割と冗長だった気がする。そこのシーンが良いというのは分かるけど、自分はあまりピンと来なかった。同監督作の「オールドボーイ」も「親切なクムジャさん」もそうだったけど、終盤でフッと中盤までのテンションが抜けてしまうのは、自分との相性の問題だろうかwww

 この映画の最大の見所は秀子と珠子のふたりの演技と感情のうねり。特にスッキこと珠子の感情のうねりが凄い。最初は騙す相手として「何も知らない恵まれた女」としてお嬢さんと接するんだけど(スッキはスラム出身)、だんだんと秀子の無防備な純粋さに母性が芽生え、富豪の悪趣味のために自由を奪われた籠の中の鳥という境遇が明らかになっていくと「自分しかお嬢さんを守る人間はいない」と友情にも愛情にも似た感情に突き動かされていく過程が、その演技と感情表現が秀逸。あと特に第2部でのお嬢さんの心の動きもとても良くて、どのタイミングで如何に心変わりしたのか、それによって振り回される男と女の愛憎と感情の振れ幅で楽しむ映画だった。

お嬢さん 通常版 [DVD]

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哭声/コクソン [DVD]

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アシュラ [DVD]

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  元々の原作はサラ・ウォーターズの「荊の城」だったというのを後から知って驚いた。意外な所から翻案してくるなあ。

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

 
荊[いばら]の城 下 (創元推理文庫)

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綾野剛の怪演!映画「武曲」を観た。

 タイトルは「武曲(MUKOKU)」と読む。

武曲 MUKOKU

 

 去年、映画館で観た予告編でやられたので観た。上手く作ってあるので、物語と因果(設定)が大体分かるし、期待を煽る良い予告。


映画『武曲 MUKOKU』予告編

 個人的には100点満点の予告編でやられた。必要最小限の情報量で効果的に登場人物のバックボーンを描いて、想像力を上手く掻き立てて物語を脳内補完させる作り。

 観ていて連想したのは漫画の喧嘩稼業(喧嘩商売)だった。現代において不要な価値観である「強さ」を追い求める武術家という異質な存在。具体的には梶原父子と入江文学の構図ですね。詳しくは喧嘩商売の20巻と21巻辺りを読めば何となく伝わる、伝われ。 

  感想。・・・傑作!綾野剛村上虹郎の二人の役者の演技と、演じる役の狂気のぶつかり合いが最高!特に綾野剛は出演作品ごとに雰囲気がガラリと変わる役者なんだけど、この映画でもそれは遺憾なく発揮されていて、まさに怪演という表現が相応しい。

 勝ち負けのスポーツではなく、生死を懸けた武としての剣道を求めた父をある事件で死に追いやったことをきっかけに、剣を捨て酒と狂気に溺れる矢田部(綾野剛)、そして過去に臨死経験を持つがある日、剣道と矢田部に出会うことで、次第に才能と狂気の片鱗を見せていく少年・融(村上虹郎)。かつて人を殺した男と、かつて死にかけた少年。二人の主人公が互いの狂気(バックボーン)が少しずつ明かされて醸成されていった結果、最終的には互いの狂気が交錯する対決へと至る・・・という感じのあらすじ。

  いやもう何が最高かって、この構図(アングル)が最高な訳ですよ。殺陣のシーンも迫力があって見応えがあるし、二人の役者の狂気を帯びた演技がアクションの迫力を増しているのもポイントが高い。よく映画だと刀での殺陣は刀が軽かったり薄かったりして、触れれば斬れるという「重さ」が足りなかったりすることがあるけど、この映画では主に木刀(真剣も出てくる)なので質感もガチだし、頭に当たれば割れる、突けば死ぬという雰囲気を上手く捉えていると思う。

 些末なことだけど、融がいきなり剣道部に入ったりとか(ラップはどうした)、ストーリーがやや飛び飛びで唐突なのは否めない。「原作だったらもう少し丁寧な描写(説明)があったのかな」 みたいなことは何度か思ったけど、二人の対決という最大の見所のための映画なので、全然気にならなくなるし、気にしてはいけない。

武曲 MUKOKU 2枚組 [Blu-ray]

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武曲 MUKOKU

武曲 MUKOKU

 

 

  追記のようなもの。映画がものすごく面白かったので原作の小説も読んでみた。

武曲 (文春文庫)

武曲 (文春文庫)

 

  映画とは雰囲気が全然違って青春モノみたいな感じもあったけど、これはこれで面白かった。ただこの原作を基に、あんな風に話と演出を再構成したんだなと思うと改めて映画版の凄みに驚く。

2018年の「ファイトクラブ」情報その2とオーディオブック(カセットテープ版)の話

 前回の記事で書き忘れていたことがあったので、情報を追加。

ippaihaten.hatenablog.com

 

 原作小説(洋書)の表紙も1997年の発売から何回かリニューアルされてますが、2018年にまたリニューアルされるみたいです。

Fight Club

Fight Club

 

 これ(↓の画像)がおそらく今までの最新版(作者のあとがきが追加されているバージョン)なんだけど、

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 新しい表紙はこっち。映画版も彷彿とさせるデザインでカッコいい。洋書は色々なデザインがあって面白いなあ。

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 ちなみに作者のあとがきが収録された翻訳版も「新版」として再文庫化されているので、別にわざわざ洋書を買う必要はないんですが、コレクター心をくすぐる(笑)

 一番安く手に入れたいなら、原著になるけど電子書籍版が一番安くて500円くらい。

Fight Club

Fight Club

 

 

 閑話休題ファイトクラブも公開されてから来年の2019年で20周年になるので、なんかイベントとか地上波吹替収録版のBlu-rayが発売したりしないかなあと思う日々。  

 

 そしておまけの話。洋書の話で思い出したんだけど、かつての日本国内ではあまり根付かなかったみたいですが、海外ではオーディオブックって割とポピュラーで、少し前にはCDとかカセットテープとか売っているのを見かけたけど(内容はそのまんまペーパーバックの朗読音声)、今は読み上げアプリとか活用すれば電子書籍とかでも普通にできるし、オーディオブック自体も一定の需要は生まれているような感じ。

 その流れで紹介(自慢)したいのは、10年くらい前にアマゾンのマケプレか何かで買った「ファイトクラブ」のオーディオブック 、しかもカセットテープです。これを探して買った当時は、CD版がなかったんだけど、そのうち出るだろう出たら買おうとか思っていたらそのまま忘れていて、その忘れている間にCD版が出て、そして絶版になり、この前プレミア価格で売られているのを知ったという感じなんですが、もうどこにもカセットテープ版のオーディオブックの情報が見当たらなかったので、こういうアイテムもあったんだぜという意味で紹介しておきます。

 

 パッケージ外観の表と裏。中古で買ったんで、パッケージは割とボロボロです。

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 カセットテープの外観。TAPE1からTAPE4までの4本ある。FIGHT CLUBのロゴがカッコいい。

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 CD版もコレクション的な意味では欲しいけど、MP3とかで売ってたら即買うと思う。

 

 

2018年の「ファイトクラブ」情報

 2018年のファイトクラブ情報。アマゾンから廉価版(Blu-ray/DVD)が今月(2018年3月)に発売するようだ。 

  

  おそらく、そのまんまの廉価版だと思われるが、Amazonビデオ購入するか円盤買うかだったら、円盤の方が良いんじゃないですかね。スマホタブレットで観たければ別だけど。ちなみにファイトクラブを見放題で配信しているネット動画サイトって今はNetflixくらいしかなさそう(他は配信していないか、数百円の個別課金で見れるタイプ)。

 

 あと今回見つけたファイトクラブ関連の発売予定商品。 

Fight Club: A BBC Radio 4 drama

Fight Club: A BBC Radio 4 drama

 

  おおおっ!?

 詳細はよく分からないですが、ラジオドラマのようです。最初はオーディオブックかな? と思ったんですが、どうやら違うみたい。まだファイトクラブ関連の新商品が出るとは喜ばしいことですね。リスニング力はほとんどないですが、とりあえずポチっておきました。