実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

綾野剛の怪演!映画「武曲」を観た。

 タイトルは「武曲(MUKOKU)」と読む。

武曲 MUKOKU

 

 去年、映画館で観た予告編でやられたので観た。上手く作ってあるので、物語と因果(設定)が大体分かるし、期待を煽る良い予告。


映画『武曲 MUKOKU』予告編

 個人的には100点満点の予告編でやられた。必要最小限の情報量で効果的に登場人物のバックボーンを描いて、想像力を上手く掻き立てて物語を脳内補完させる作り。

 観ていて連想したのは漫画の喧嘩稼業(喧嘩商売)だった。現代において不要な価値観である「強さ」を追い求める武術家という異質な存在。具体的には梶原父子と入江文学の構図ですね。詳しくは喧嘩商売の20巻と21巻辺りを読めば何となく伝わる、伝われ。 

  感想。・・・傑作!綾野剛村上虹郎の二人の役者の演技と、演じる役の狂気のぶつかり合いが最高!特に綾野剛は出演作品ごとに雰囲気がガラリと変わる役者なんだけど、この映画でもそれは遺憾なく発揮されていて、まさに怪演という表現が相応しい。

 勝ち負けのスポーツではなく、生死を懸けた武としての剣道を求めた父をある事件で死に追いやったことをきっかけに、剣を捨て酒と狂気に溺れる矢田部(綾野剛)、そして過去に臨死経験を持つがある日、剣道と矢田部に出会うことで、次第に才能と狂気の片鱗を見せていく少年・融(村上虹郎)。かつて人を殺した男と、かつて死にかけた少年。二人の主人公が互いの狂気(バックボーン)が少しずつ明かされて醸成されていった結果、最終的には互いの狂気が交錯する対決へと至る・・・という感じのあらすじ。

  いやもう何が最高かって、この構図(アングル)が最高な訳ですよ。殺陣のシーンも迫力があって見応えがあるし、二人の役者の狂気を帯びた演技がアクションの迫力を増しているのもポイントが高い。よく映画だと刀での殺陣は刀が軽かったり薄かったりして、触れれば斬れるという「重さ」が足りなかったりすることがあるけど、この映画では主に木刀(真剣も出てくる)なので質感もガチだし、頭に当たれば割れる、突けば死ぬという雰囲気を上手く捉えていると思う。

 些末なことだけど、融がいきなり剣道部に入ったりとか(ラップはどうした)、ストーリーがやや飛び飛びで唐突なのは否めない。「原作だったらもう少し丁寧な描写(説明)があったのかな」 みたいなことは何度か思ったけど、二人の対決という最大の見所のための映画なので、全然気にならなくなるし、気にしてはいけない。

武曲 MUKOKU 2枚組 [Blu-ray]

武曲 MUKOKU 2枚組 [Blu-ray]

 
武曲 MUKOKU

武曲 MUKOKU

 

 

  追記のようなもの。映画がものすごく面白かったので原作の小説も読んでみた。

武曲 (文春文庫)

武曲 (文春文庫)

 

  映画とは雰囲気が全然違って青春モノみたいな感じもあったけど、これはこれで面白かった。ただこの原作を基に、あんな風に話と演出を再構成したんだなと思うと改めて映画版の凄みに驚く。