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実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

映画「レヴェナント 蘇えりし者」を観た。

映画

 4月末に観てきた。公開前から「ジャンゴ 繋がれざる者」のディカプリオと「マッドマックス 怒りのデスロード」「ウォーリアー」のトム・ハーディが共演ということでかなり期待していた作品だった。

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感想:超面白い。ひたすら長い(160分)けど。

 あらすじは、息子を殺して自分を生きたまま埋葬した奴をブッ殺す!という太シンプルなストーリーライン。だから意外な展開という意味でのネタバレはこの映画に存在しない。じゃあ何が見所かと言うと、ディカプリオが冒頭で熊と延々と戦う所と、熊に嬲られて死にかけ、仲間に裏切られたディカプリオが徐々に復活していく過程である。そして、復活と同時に復讐すべき理由を失っていく物語でもある。この部分を楽しめないと、雪山の中をたった一人でひたすら唸って転げ回っているディカプリオを眺めるだけの映画になってしまうが、それはそれでこれどんなロケ環境で撮ったんだよ! みたいな過酷な大自然映画として楽しめるはず。

 

 といった具合に、色々な要素を詰め込んで間口は広く作ってあるおかげで、誰が観てもどこかは面白いと思える大作映画だと思う。その反面、引っかからなかった部分が逆に足を引っ張って、全体的には映画としてぼやけてしまっていたのは残念。凄い映画だったけど何が凄かったのかはよく分からない映画になってしまった気はする。

 

 以下、箇条書き感想(少しネタバレ風味) 

  • 基本は復讐モノではあるのだけど、キリスト教(あるいは原初宗教)的なテーマも根底には流れている。端的に言えば、死と再生、神の不在、契約(と破棄)だ。 
  • 死と再生については、作中でもディカプリオを通して繰り返し描かれているように、一度は全てを奪われ死んだディカプリオの蘇りに始まって、何度か危機的状況を潜り抜けるたびに神の啓示的なヴィジョンを見て、目が覚めると生命力が回復していく過程が何度も繰り返されるのだけが、それだけで普通に面白い。罠で捕まえた魚をその場で生のまま食べ、獣を狩って焼いて食い、寒さを死んだ馬の体内で凌ぐディカプリオ最高。
  • 神の不在については、あらゆる場面で暗黙的に描かれている。ディカプリオが出ていないシーン全て(=他の人間が出てくるシーン)においてと言ってもいい。ディカプリオは絶望的な環境にいるけど、絶望はしていない。洞窟に息子を殺した男の名前を刻むくらい明確な復讐(生きる)の意思がある。
  • 印象に残ったのはトム・ハーディの語る父親のエピソードだろう。神を信じていなかった父親が、ある日飢餓のあまりおかしくなって木に登る。そこで見つけたリスに神を見たと思い、銃で撃ち殺して食った。親父にとってはリスが神だったのさ、という話。
  • トム・ハーディ演じるフィッツジェラルドは、父親のエピソードを語っているように神を信じていない。基本的には復讐すべき悪人として描かれているのだけど、話が進んでいくとそうでもない気がしてくる。
  • 嘘はつくし、人は殺すし、金にはがめついし、フィッツジェラルドの行いは「道徳的には」正しくはないが、最終的には復讐されるほど悪かったかというと、そうでもない所が面白い。
  • 息子を殺したのはギルティ(有罪)にしても、死にかけの人間(ディカプリオ)を見捨てたのは、あの状況なら非難はできないよなーとは思う。
  • そこで面白いと思うのは、作中にちりばめられた「契約」という概念だ。冒頭では動けなくなったディカプリオの死を看取る行為に対して、隊長とトム・ハーディは割増金を対価に契約をしている。攻撃的な先住民と野蛮なフランス人との間でさえもさらわれた部族の女を探すために、馬を巡っての「契約」が交わされている。
  • うろ覚えだけど、トム・ハーディがラストで「契約は破棄されたから無効だ」と言うシーンがあって、それがすごい印象に残っている。そこでふと、作中で何度も交わされている契約も、すべて文明人(先住民を憎むトム・ハーディや先住民を騙し暴行する白人たち)の手によって破棄されていることに思い至る。
  • おっと、ここから先は妄想混じりのふわっとした抽象的な感想だ。
  • なんとなくのイメージで言うと、キリスト教的な神との契約は破棄されて、新たな神と契約したような感じ。新たな神というのは、人によってはリスであり、金でしかない。
  • ディカプリオは先住民の女と結婚したり、先住民を助け・助けられたり、神の存在を感じたり、先住民たちと同じ側の人間だ。だからこそ、先住民を憎み、神を信じないトム・ハーディに殺されそう(契約を破棄)になる。
  • ディカプリオが最終的にはトム・ハーディに直接手を下さず、「復讐は神の手に委ねる」と告げ、川の向こうにいる先住民たちのもとにトム・ハーディを流す(そして、先住民に普通に殺される)。その後、先住民たちは部族の女を助けたディカプリオの命を見逃すが、その時に先住民から蔑んだ目でディカプリオを見ているように感じる。
  • これは復讐を遂げたディカプリオが先住民と同じ側ではなく、トム・ハーディと同じく絶望しかない神のいない世界に立ってしまったのだと思う。なんで蔑まれているかというと、ディカプリオは神を殺したから。
  • つまり、ディカプリオにとっての神は、復讐の対象としてのトム・ハーディだったんだよ!(な、なんだってー!?)。
  • そう考えるとラストシーンは、復讐の後に何も残らなかったディカプリオ。あるのはただ、神が存在した頃の過去の幻だけという風に読めるなあと思った。 

   

 

  

  

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