実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

実写化の模範解答。映画「BLEACH」を観た

 漫画原作の実写化ってキャスト・アクション(演出)・脚本のどれか1つ勝てれば成功、2つ勝てれば大成功みたいなイメージがあったんですが、色々な実写化映画を観ていると、最近は原作イメージを書き換えて(上書きできて)いるか、というのも大事だなあと思うようになった。そういう意味ではこのブリーチはひとつの模範解答みたいな映画だった。ちなみに原作は完結していて既読。

BLEACH

 感想。思っていたよりもずっと良かった。激烈に良かったという部分はそれほどだったけど、確実にポイントを押さえた上で、BLEACHとしてしっかり成立させていたのは良かった。

 この映画は原作で言うと序盤の死神代行編の辺りがベースで、尸魂界(ソウルソサエティ)潜入編まではやらないんだけど、それでも初期のブリーチの世界観を捨てずに仕上げた手腕は素晴らしい。いや、この後くらいから卍解とか死神隊長勢揃いと、物語の第一次ブースト化(インフレ化)が始まるので、確かにその部分までも拾ったら絵面も派手になるし面白くなるんだろうけど、その反面駆け足になるし、細部が雑になりかねないというデメリットもあったと思う。そこをあえて拾わずに、初期のエピソードを独自のテーマ(母親と大虚周辺のエピソード)も掘り下げて膨らませて、原作以上に良いエピソードに丁寧に仕上げているので、そこは声を大にして評価したい。そこは声を大にして評価したい(大事なことなので2回言った)。

 主演の福士蒼汰(不意に鈴木伸之に見える)や杉咲花と全体的にキャストのアレンジが強くて、原作のイメージの書き換えに成功している。全体的にキャストが豪華で、作中での「大人」側のキャラを江口洋介長澤まさみ田辺誠一が演じているのはズルいと言いたくなるぐらい、大当たりレベルの良さがある。あと、本編のラスボスである白哉をMIYAVIが演じているんですが、雰囲気も白哉のイメージとMIYAVIのビジュアルイメージが高次元で融合していて、これが一番のハマり役かもしれない。アクションもキッチリ迫力のあるシーンになっているし、特に阿散井恋次戦での蛇尾丸は見所のひとつ。

 設定もできるだけシンプルにしていて、原作未読の人や初見の人であっても十二分に楽しめる映画だったと思う。何よりも、あくまで劇場版ブリーチ(読切版)として完結させていたのが良かった。終わらせ方も割と斬新に感じたのも好評価のひとつ。あそこで終わらせるとは完全に予想外で、逆にそのことがBLEACHという原作とファンに対する信頼感を感じる。続編があるかないかは分からないけど、あるなら、織姫・チャド辺りの話をオリジナル・スピンオフドラマとして設定を補完した上で、やるんだろうなという予言を一応しておこう。万が一でも予言が当たったらなんかください(笑)

 

 

 

妻であり母であり女だった人間の挽歌。映画「悪女」を観た。

 悪女 AKUJO(字幕版)

  韓国アクション! 殺し屋の女! 殺し屋の女が国家の犬になりやがて復讐を! と自分のテンションがガンガン上がるタイプの映画だった。これは間違いなく大傑作。アクションのレベルの高さが凄いので、とりあえず予告編を観てほしい。ほぼノースタントのアクションで、バイクと日本刀のシーンとか、CGを極力使わずにドローン撮影しているらしいので超絶ヤバい。 


映画『悪女/AKUJO』予告編

 

 物語の骨子は愛する者を奪われ続けた一人の女の復讐譚なんですが、これが滅法面白い。韓国ノワールとも言うべきダークさとソリッドさを持ったストーリーでとても自分好み。

 そして、まず冒頭の掴みがアクション映画として120点満点で、一人称視点ワンカット風アクション無双から観客の度肝を抜きつつ、敵からの反撃で鏡に叩きつけられる直前、主人公のスクヒの顔が映って鏡に激突した瞬間から三人称視点に移行するという流れで、完全にハートを掴んでいった。

 前半から中盤にかけて、殺し屋だったスクヒが、国の諜報機関に強制スカウト&同じ境遇の女たちと養成所で訓練するんですが、養成所の設定(表向きは)も良いし、訓練でのアクションや女の感情が渦巻くシーンも見応えあるし、主人公の過去が断片的に回想されていく演出もベタだけど効果的。

 スクヒ役のキム・オクビンがあらゆるシチュエーションで美しくカッコいいのもあるんですが、特にウェディングドレスでトイレからの長距離狙撃シーンは、一枚のキマった絵画然としているし、そこに至るまでのカットも含めて無限に再生したくなるくらい良い。

 とにかく冒頭からラストに至るまでの徹頭徹尾、最高の映画だった。ラストの口笛も、スクヒの背中を押した風にも読めて余韻があってエモい。

 日本刀持ったままバイクでアクションとか、バスで斧を武器に戦うシーンとか、とにかくあらゆるアクションが見所と言っても間違いじゃない。あとこの映画でもスクヒが「暁生カー」をしていて、これまた最高に絵になっているし、「暁生カー」(分からない人はググろう)の出てくる作品にハズレなしというジンクスをまた一つ重ねてしまったのだった。

悪女/AKUJO [Blu-ray]

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悪女 AKUJO(吹替版)

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BlackBerry】 

 少し前に念願のBlackBerryユーザーになったことで、映画内に出てくるブラックベリー端末を察知する能力が覚醒した。なので、作中にblackberryが使われていると気付いた作品を記録していくことにした。

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 おそらく機種はBlack BerryQ10だと思う。日本国内ではあまり馴染みのないタイプ。

 

 

 

 

綾野剛が実質主演の存在感。映画「亜人」を観た。

 最近の漫画原作の実写化は全体的にレベル高い、確実に高くなっていて、やっぱりある程度の本数を作らないと質は向上しないもんだなあと思った。要因は色々あるだろうけど、個人的には特に脚本の構成力が上がっているような気がしている。原作から映画脚本への落とし込みの取捨選択がブレていないというか、原作の本質を押さえつつ実写化に際してのテーマ性が上手く同居できている感じ。割と次回作も作られたりするので、話の詰め込みも上手く配分できていて好循環なのかもしれない。この映画「亜人」もそんな風に感じた映画だった。ちなみに原作はまだ連載中(一応雑誌で読んでる)で、少し前にアニメ化もしてる。

亜人

 感想。アクションとCG含めた演出(IBMのアクション)が抜群で全体的に完成度が高い。主人公と敵対する佐藤役の綾野剛のキャラが最高に存在感あって実質主演だった。泉役の川栄李奈もかなり動いていて、相手との身長差を生かしたアクションとか見応えがあった。

 冒頭数分の説明で、亜人の設定と主人公の覚醒まで済ませたのは展開がスピーディになってとても良かった。序盤で主人公が作中の設定に戸惑ったりするのは割とダルかったりするので、これは本当に良い采配だと思う。作中でのニュース(世論)の描写は「踊る大捜査線」「PSYCHO-PASS」シリーズの本広監督っぽさもありつつ。

 亜人の各種設定って原作でも結構複雑で、ちょっと取っつきにくい部分はあるんだけど、映画ではかなり大胆にアレンジしていて、とても分かりやすいのも好感触。その上でキャストが死なない亜人としてのギミックを活用したアクションと、IBMが連動してガンガンと動いてくれるからアクション密度も高くて魅せてくれる。

 そして、綾野剛は本当に何でもできるなあ、というか作品によって完全に演技や空気感を変えているのが凄い。原作の佐藤の狂気ととぼけた感じを再解釈して表現していて、作中で実行していた亜人の特性を利用した裏技とか、この佐藤=綾野剛なら顔色変えずにやってのけるだろうなあとか、そういう説得力がある。あと全編に渡って主人公を「永井くーん」と呼ぶ所とか、何故か突然脱ぎだす所とか、シュールなギャグになっていて最高に面白い。

  原作を知らなくても十二分に楽しめるし、続編も十分期待できる内容と引きだったし、文句なくオススメ映画。 

亜人

亜人

 
亜人 Blu-ray豪華版

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【関連】 原作漫画とか、アニメとか。 

亜人(1) (アフタヌーンコミックス)

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