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実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

少年マガジンの特別読み切り「聲の形(こえのかたち)」

 色々な所で話題になってるけど、今週の少年マガジンに掲載されている聾唖(ろうあ)者(とイジメ)を題材にした「聲の形(こえのかたち)」は読めるなら読んでおいた方がいい漫画。

 作者は大今良時。漫画版「マルドゥック・スクランブル」のコミカライズでデビューした漫画家ですね。今回の掲載作は、デビュー前に投稿した「マガジン新人漫画賞」で物議を醸しつつ最高賞を受賞した作品で、その時には掲載されなかったようですが、今回の掲載に当たり大幅にリライトされたようです。講談社の法務部、弁護士、全日本ろうあ連盟と協議を重ねてようやく日の目を見れたみたいだけど、まあそこらへんは宣伝アオリ含めて話半分かな。

 まだ一回しか読んでないけど、とりあえずこのブログ書きながら少し考えてから、もう一回読み返すつもり。

 まっすぐでいい話だと思う。ラストの落としどころについても肯定派。「歌いたい」か「歌いたくない」かと先生に聞かれるシーンで「歌えるようになりたい」と答える所とか好きだな。主人公の気持ちと、先生の心情(二択しか思いつかず、それしか与えず処理したい)が対比的に描かれていて。なんつーか、「本人の意志を尊重」と「自己責任」って、こういう風に組み合わせるから、自己責任って好きな言葉じゃないんだよなあと読んでて思った。しかし、便利な言葉ではある。

 あとイジメ描写のエグさがよく出ているのもいい。クラスの描き方がちゃんと小学生のイジメって感じなんだよなあ。金額読み上げとかリアルよなー、と思う。先生もクラスもクズだけど、それ以上に感じるこのあるある(いるいる?)感。でもこれって、自分がクラスの一員だった時の風景だよなあと思った。ここまで振れ幅は大きくないにしても、自分と同年代に「クラスの一員」であった人なら、何か嫌すぎるリアルさを感じているんじゃないかと思う。あと集団(クラスメイト)の掌返しっぷりは、この前読んだ「ストーンコールド」に出てくる『みんな』を思い出す。

 お互いの聾(こえ)が聞こえないから相手が何を考えているのか分からない、という本作のテーマも説教臭くなく描かれていて良かった。そういうの含めてラストのやり取りが効いているし、過去とラストでの主人公の描かれ方(視点)の違いに気付いて思わずニンマリしてしまう。

 

 障害者を題材にした作品が出ると必ず話題(批判含む)にも出る「聖人化(精神的ピュアさ)」と「美化(外見がかわいい)」が強調されてしまいがちだけど、そこにイジメというリアリティを入れてうまくバランスが取れている。そういう題材にはイジメも付きものだけど、この作品にそのバランスを感じるのは、去年の大津いじめ事件の報道・ニュースでの影響もあるんだろうなあと思う。「死に至るイジメ」があるという事実と、作中で主人公が取った「イジメの、ひとつの終わらせ方」が提示されている辺りに作者か編集部の意志、バランスが見えていて興味深い。だからこそ今読むべきだと思うのだ。そのうち単行本になるかもしれないけど、今の空気感で読むとより楽しく読める。

 

 あと、この話題関連でよく言及されている漫画「元気やでっ」。20年くらい前に少年ジャンプで出ていた。この頃もいじめ問題が表層化してきた時期だったなあと思い出した。

元気やでっ (ジャンプコミックス)

元気やでっ (ジャンプコミックス)

 今の少年ジャンプでは載らなそうな漫画ではあるけど、今は少年マガジンで載った。今のサンデーもチャンピオンに載るにも少し違う感じがする。マガジンならアリだな、とそう思わせる雑誌全体の空気感はあるのかもしれない。

 単行本にもなってますが「元気やでっ」は絶版。プレミアも少しついているみたいなので、そこまでして買う意味は薄いとは思うので、内容はa Black Leafさんの所を見たらなんとなく分かるだよ。