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実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

時代遅れのハッカーは頭脳ではなく暴力を使う!映画「ブラックハット」

 ハッカーが主人公の映画ってあまり観たことないんだけど(直近だと「ピエロがお前を嘲笑う」)、理由としてはなんとなく分からないでもない。物語の中でのハッカーって、作中の記号の中では詐欺師(犯罪者)か凄腕のエンジニアのどちらかに収束してしまうからだ。映画なんかで出てくるハッカーは前者の側面が強いし、元々の語義からいえば後者が正しい。少し詳しい人はハッカーとクラッカーの違い問題みたいな話にもなってくるから、表現の仕方として難しい部分は多々ある。

 媒体は変わるけど、漫画「王様達のヴァイキング」は主人公がハッカー(元クラッカー)としてきちんと成立している作品だと思う。序盤でのオススメは2・3巻のサイバー攻撃編と5巻のオンラインゲームでの資金洗浄編。 

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 で、映画「ブラックハット」の感想だけど、細部のディティールとかそれぞれのシーンは良い。RAT(マルウェア)を使った攻撃表現(CPUの内部の電子の動き)とか、NSAスパコンに侵入してデータを修復したり、多少は引っかかる部分はあるものの、分かりやすさを優先したと思えば許容できる。あと、暗い部屋でキーボードをカタカタゆわせたり、ステロタイプなハッキング表現のテンプレートからは距離を取ろうという姿勢も見られるので良い(黒画面に緑文字は伝統なので仕方がない)。 

 ここからが本題だけど、じゃあこの映画がハッカー映画かって言うと、なんか違う気がするという問題がある。

  元々のストーリーラインは、自分達が過去に作ったプログラムが利用された犯罪を解決するために、夢破れて投獄された友人の手を借りる(のと友人に再起してほしいという友情)ため、FBIと交渉して仮出所させる・・・みたいな「男たちの挽歌」チックで個人的にはツボな話。

 そんな王道ストーリーにサイバーと経済ネタを中心に現代っぽくコーティングしたのがこの作品なんですが、一言で言うと微妙。二言なら、話の筋としては面白いけど、演出(ディティール)との食い合わせが致命的なほど悪い

 悪い理由は大きく3つある。以降はネタバレも含むんで、↓の「続きを読む」からどうぞ。

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1・敵の目的が意味不明

 敵となるハッカー集団(?)は作中で大きく3つの犯罪を計画していた。1「中国の原発への侵入(ポンプの誤作動を誘発しメルトダウン寸前にした)」、2「大豆先物相場の価格操作」、そして3「スズ鉱山の水没」だ。犯人の最終目的はスズ鉱山の採掘に使われているポンプを誤作動させ(1で確認済)、鉱山全体を水没させることでスズの価格を吊り上げ、大儲けする(2で稼いだ種銭を使って)というものだったのだ!

 えーと、でかい事をやりたかったなら、1が達成できた時点でかなり凄いよね? あと金が目当てなら2の手法を繰り返したらいいよね? 1と2が成功した時点で、満を持して3を実行する意義が薄すぎる。3→2→1の順番なら犯罪計画がスケールアップしていく流れなんだけど、本作ではだんだんとスケールダウンしていくのだ。ありっちゃありなのかもしれないけど、そのせいで敵のハッカーが何をしたかったのかブレてしまい、よく分からないことになってる。

 

2・ヒロインとキャストの問題

 ヒロインは主人公の友人の妹で、有能なネットワークエンジニアっぽいんだけど、その手腕はほぼ発揮されることなく、主人公の出所後の性欲処理係兼助手みたいなことになっていて完全に空気。ヒロインの女優さんは美人だけど、出てくるシーン全部カットしていても特に問題ない悲しみ。主人公の友人もほぼ空気なんだけど、バズーカでダイナミックに車ごと爆破されるのが唯一の見せ場だった。FBIの捜査官とかも銃撃戦で少し活躍するが、その他は特に何をするでもなく棒立ち。敵も味方も含めて、主人公のハサウェイ(途中から「マイティ・ソー」の人だと気付いた)以外はモブと思って差し支えない。

 

3・主人公のアクション

 主人公は服役中の凄腕ハッカーという設定だが、「自由でいるため」刑務所の中でも身体の鍛錬を欠かさない男だ。だから銃撃戦も難なくこなすし、敵のハッカーを先の尖ったドライバーでメッタ刺しにして倒したりもする肉弾派だ。ハッカーとしての凄さを見せるシーンはあまりないが、敵のハッカーも主人公に呼び出されたら現場に武装して現れる肉弾派なので特に問題はなかった。そもそも、主人公はクレジットカード詐欺の常習犯で捕まっているので、ハッカーを詐欺師と置き換えても違和感がない。しかし、作中ではハッカーという設定だから、パソコンの前に座っているシーンが多い。ソーシャルエンジニアリングって技術もあるから、広義の意味でのハッカーではあるのだけど、観客が求めているハッカーではない気はする。

 

 知能戦のハッカー映画かはともかく、主演目当てのクライムアクションとして観るならば、まあ観てもいいかも。

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