実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

虚無の動機とプロフェッショナル。映画「女神の見えざる手」を観た。

 原題は「Miss Sloane」。主人公がエリザベス・スローンという名前なんですが、こういった洋画の原題のシンプルさってすごいよなーとたまに感心する。「スタンドバイミー」とか「The Body(=死体)」だしなあ。

女神の見えざる手(字幕版)

  本作は日本ではあまり馴染みのなさそうなロビイストが主人公の映画。ロビイストというのは、政治活動専門のコンサルタント(集団)、みたいな理解。ドラマ「ハウス・オブ・カード」の選挙対策チームみたいな感じか。主人公のスローンがメチャクチャ有能で、銃規制法案を巡ってライフル協会や古巣の会社を敵に回しながら、目的のために、常に先を読んで表も裏の手も使って支持者や支援者を増やし、同時に対立議員のイメージダウンや懐柔策を打っていくのが痛快。主人公の頭の回転の如くスピーディで、テンポよく進むので面白い。

 政治モノとか敷居が高そうだけど、勢いとテンポがあるので、アメリカの政治形態とか知らなくても全然楽しめるし、話にフックがあり終盤の展開も、ラストシーンの余韻(スローンの表情)もあり、良質なサスペンスとしてもよくできている。  

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  主人公であるスローンは勝つ(クライアントの要望を満たす)ことが自分の義務であり、それが仕事だと断言するくらい有能なクールビューティ。その反面、私生活は不眠症で興奮剤を常用してエスコートサービス(男娼)呼んだりしてるんだけど、それがスローンの人間味を表現しているかというとそうでもない所がミソ。なんとなく主人公に感じたのは虚無感。それが何に起因するのかと言えば、たぶんスローン自身から「動機」が見えないからだと思った。金や善悪のために動くというタイプでもなさそうで、じゃあ難易度の高い仕事だからというだけでここまで全身全霊で打ち込むのか、というのも分かるようで分からない。それが、この映画(主人公)に虚無を感じた所。

 観終わった後に、なんかこの虚無感は「ゼロ・ダーク・サーティ」っぽいなあと思っていたら、本当に主演が同じ人(ジェシカ・チャステイン)だった。これもまた主人公の動機に虚無を感じた映画であり、どちらの映画も良かった。  

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 余談。作中で主人公のスローンが使っているスマホBlackBerryなんですが、全体のフォルムと背面の感じからすると、たぶんClassicかなあ。ロビイストという秘密やセキュリティを重んじる仕事にはピッタリのチョイスで、ブラックベリー好きとしても嬉しい映画だった。