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実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

「ヘイトフルエイト」から始まるウェスタン映画の道

映画

  今年の4月くらいに「ヘイトフルエイト」を観た。上映している所が近くに全然なかったが、映画館で観れてよかった映画のひとつ。今までほとんど意識してウエスタン映画って観たことなかったんだけど(「ジャンゴ」とかも広義の意味では入るかな?)、ヘイトフルエイトを観てたらちょっと興味が出てきたので、ちょっと意識してウェスタン映画を観ていこうと思ったのだった。

  ヘイトフルエイトは、人を選ぶと思うけどとりあえず観てくれとしか言えない内容。黒人の賞金稼ぎ(サミュエル・L・ジャクソン)、その黒人の賞金稼ぎに送られたリンカーンの手紙、南北戦争・・・等々それだけでテーマとして深掘りできそうな所を、設定や小道具としてサラリと描いて、ヘイトとゴアに注力した感じの作品。サミュエルのヘイトを高めずにはいられない煽り力の高さと、西武時代の終わった時代での西部劇、みたいな印象が強かった。

 

 そして、とりあえず手を出したウェスタン映画は「ワイルドバンチ」。はじめてのサム・ペキンパー監督作品。西部劇を終わらせた「最後の西部劇」と呼ばれる作品らしい。自分にとっては、はじめてのウェスタン映画なんだけど(笑)

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 男の世界(byリンゴォ・ロードアゲイン)って感じの映画でかなり好みの作品だった。主人公たちは西部の人間で、作中では取り残された時代の人間たちだ。彼らを取り残した「新しい時代」というのは、権力にすり寄り、自らの欲望を満たすだけの人間の時代。そういった新しい時代って奴に一発ビンタをくれてやるという話。

 冒頭の強盗シーンや列車強盗のアクションシーンもカッコいいが(この部分は少し「ブレイキングバッド」を彷彿とさせた)、何といっても見所は終盤の、仲間を助けるためにたった4人で数百人の軍隊に殴り込みをかけるシーンは熱い展開。

 この映画の主人公はワイルドバンチ強盗団のリーダーであるパイク・ビショップなんだけど、パイクの元仲間で、過去の罪を償う代わりに鉄道会社に雇われて鉄道警察として使えない部下(元罪人)をあてがわれ、コキ使われる中間管理職のような役回りのソーントンもある意味ではもう一人の主人公。同じく時代に取り残された者たちと共に去っていくシーンは感慨深い。

 

 

 その次に観たのは「許されざる者」。イーストウッド監督・主演で、この映画もまた「最後の西部劇」と呼ばれているらしい。感想としては、確かに最後の西部劇と言うにふさわしい内容だったと思う。

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 「ワイルドバンチ」で描かれた西部の終わりは、西部時代そのものの終わりであって、この映画で描かれているのはガンマンの終わりを描いているのだと思う。それはつまり、ガンマンというヒーローの出てくるウェスタン映画そのものであり、ファンタジーとしての西部時代の終わりという意味でだ。

 西部のヒーロー(アクション)はなかったというスタンスから、西部劇を現実的に再構築してみせた感じ。ド派手なアクションではないものの、静動の効いた動きで相手を仕留めていくのは良い。長年断っていた酒を呷ってからのイーストウッドは、作中において明らかに異物であるかのように演技していたのが印象的。

 タイトルである「許されざる者」が誰を指しているのかは明示されていない。かつて伝説的な悪党(アウトロー)だった主人公のマーニーなのか、それとも保安官のリトル・ビルだったのか、それとも別の誰かか。渡辺謙主演のリメイクverもちょっと気になっている。

  

 最近の作品も見てみようと思って、2014年の映画である「悪党に粛清を」を観た。デンマーク製作で原題は「The Salvation(救済)」。原題もいいが、邦題のセンスはかなり好きだ。 パッケージと邦題の期待感とは少し違ったスピードだったが、最終的な着地感は良かった。

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  ノワール系西部劇と銘打たれていたけど、なるほど確かに西部劇ではあるんだけど、メインはどちらかといえば復讐譚だ。故郷のデンマークから呼び寄せた妻と子を殺した無法者をSATUGAIしたら、その相手はこの一帯を支配する悪党の身内で・・・というのが主なあらすじ。次々と仇討ちや復讐が連鎖していくんだけど、その端緒となる、冒頭の駅馬車内での緊迫感ある駆け引きとアクションが印象深い。

  エヴァ・グリーン演じるマンデラという原住民に攫われて舌を切り落とされた美人がさらっと出てきて、当然、一切喋らないんだけど、いるだけで目を引く存在感と語られない壮絶な物語を感じさせる瞳がとても良い。

 

  そして最後に、直近で観たのは「怒りの荒野」。タランティーノが好きな映画で、作中の曲が自身の監督作である「キルビル」や「ジャンゴ 繋がれざる者」の中でもBGMとして使われているのは有名だと思う。

 オープニングもカッコいいし、ガンマン十戒とか師弟モノとか自分のツボ要素も盛り沢山で、本当に良かった。

 


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 町のほぼ全員から見下されていた主人公が、流れ者のガンマンの弟子になり、心得を学んでいく中で、ガンマンとしての才能を開花させていく。自らの力に溺れる主人公と主人公の力を制御し利用しながら次々と町の実権を支配していく師匠。師匠の過去の悪事を知り、主人公を昔から見守ってきた元保安官の忠告も、主人公の耳には届かない・・・みたいな展開を経て、最終的には主人公と師匠が戦うんだけど、そこに至るまでの展開が激アツ過ぎて必見。

 何が良いかって、主人公に拳銃という暴力の扱い方と魅力を教えたのは悪のガンマンなんだけど、その暴力をコントロールし正しく使うことを教えたのは元保安官(元正義)の爺さんという、ダブル師匠構造なんだよな。意外とありそうでない気もするし、でもめちゃくちゃ熱いんですよダブル師匠構造の作品は。

 それまで蔑まれてきた主人公を一人の人間として扱う部分も、それまでの鬱憤をブチ撒けるかのように自身の力を行使する主人公の気持ちも理解できるが故に、単なる善悪ではなく善悪のグラデーションが描かれていてとても面白い。いや、確かに名作だと思わせてくれる一作。

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   どうでもいい話だけど、ラストの片目の男が完全に萌えキャラと化していて、何だかクスリとさせてくれたことも追記しておこう。