実質的には雪の峠。映画「超高速!参勤交代」を観た(後半は「雪の峠」の話)。
時代物コメディと思っていたら、殺陣(アクション)もしっかりとしていて意外と面白かった。主演の佐々木蔵之介の演技力が大きいし、抜刀術の使い手である設定なのと、家臣たちもそれぞれの武芸に優れているので、殺陣も見応えがあった。コメディとしても、アクションとしても楽しめる作品。
ここから先は映画のネタバレというよりかは、自分の好きな名作漫画「雪の峠」の話。雪の峠というのは「寄生獣」「ヒストリエ」で有名な岩明均が描いた歴史ものの中編漫画で、派手な絵柄でもなくダイナミックなシーンもなくて淡々と会話劇で話が進むんだけど、これが滅法面白いんですよ。NHKあたりでアニメ化しないかなあと思うくらい好きな作品。
「超高速!参勤交代」を観てて、中盤くらいから「雪の峠」っぽいなあと思い始めて、後半には完全に実写版「雪の峠」と妄想を重ねながら観ていた。実際には「高速で江戸を目指す」くらいしか共通点はないんだけど、映画で家臣たちがみんな強くて、バトルになるとテンションが上がってる様なんかを見てると、徳川支配の太平の世の中、戦のために鍛えた技を振るう機会もなく燻っていた武士の思いが、雪の峠における重臣たちの思いにも繋がる部分があって、一人で何となく感じ入りながら観ていた。
まあそんなこと関係なく「雪の峠」(同収録の「剣の舞」と併せて)は名作だと思うので、機会があれば読んでみてほしい漫画。
アナーキー99に見える絶望。映画「トリプルX」を観た。
エクストリームスポーツ&スパイアクションな映画。今月公開の「トリプルX 再起動」が観たくて予習。冒頭でのXスポーツのヒーローが、政府機関にスカウトされる展開は去年観た「X-ミッション」を連想したし、それまでのスパイ映画の殻を破ろうという意志は感じた。
主演であるヴィン・ディーゼルのキャラクターとアクションが全ての映画。主人公のザンダー・ケイジは反体制・アウトロー側の人間で、スキンヘッドの全身タトゥーで他の映画だったら敵組織のボスみたいな雰囲気出しているんだけど、目が優しげなので笑うと善人っぽさが漂うのは御愛嬌。
そして安定のサミュエル・L・ジャクソンがしっかりと脇を固めている。どの映画でも初見では「あれ、これサミュエルっぽいな?(確信持てない)」、しばらくして「やっぱりサミュエルだな!・・・たぶん」、エンドロールで「ほら、サミュエルだった」となる現象に誰か名前を付けてほしい。
アクションシーンは、エクストリームスポーツとスパイアクション要素の比率が高めなので、対状況(雪山とか水上とかの自然環境)みたいなシーンに力が入っている。背後に雪崩が迫りながらスノボで滑走するシーンとかインパクトある絵面だった。格闘戦はどちらかというと少なめなせいか、印象が薄い。ヴィン・ディーゼルが格闘戦やったらかなりイカしていたと思うので、それは残念。
あとこの映画の中で一番印象に残っているのは、アナーキー99という旧ソ連系の敵組織。旧ソ連の軍人たちが結成した組織で、ソ連のために闘い戦友が死んでいく中でソ連が解体し、仲間も帰る国すらも失った結果、国なんかいらねえ、俺たちだけが楽しければいいという結論からアナーキー99を作ったってボスが語るシーンがあるんですが、その後の行動が完全に意味不明でヤバみを感じる。同国人らしき仲間の科学者に化学兵器を積んだミサイル作らせるまではいいんだけど、完成と同時にいきなり科学者全員をその化学兵器でブッ殺した挙句に「この兵器が放たれれば、どこの国が撃ったか分からずに各国が疑心暗鬼になって争いが始まり、最終的に世界は滅びる」って言い出して、ああ、これはテロとかそういうのじゃないんだな、と思った。もっとチープな悪の組織というか、雑なプランを通り越したボンクラの絶望というか、自分のセンサーに何かが反応したので印象に残っている。
ド派手なアクションが楽しい映画だった。ストーリーの骨子はやはりスパイ映画で、現代でスパイ映画やろうとすると敵はテロ組織辺りが順当だけど、この映画では、敵がテロ組織とかアウトロー集団というよりかは世界征服を企む類の「悪の組織」なんだよなあ。その辺りのチープさが、映画全体の雰囲気と合っていて、アクションに集中して楽しめた理由かもしれない。あと、あのクライマックスで主人公の取った行動が「ええっ、それでいいの!?」って思った。さすがに雑すぎるだろ! 面白かったけどな!
映画「南極料理人」と「夏の終わり」を観た。
感想書き忘れていた映画だけど、まとめて感想書くよ。今年は観た映画の感想をほぼ書いていくという決意をしたので。
「南極料理人」
- 平和な「オデッセイ」みたいな感じの映画で、料理が旨そう。
- ステーキが一番食べたい。あと存在は仄めかされるものの、その姿は終盤まで現れないラスボス的な存在のラーメン。
- 南極基地に集められたメンバーの変人ぶりと、様々な人生の変化の中で辿り着いた感。あと深夜のテンションに突然入る(大して面白くないことがツボったり、繰り返しているうちに面白くなってくるやつ)辺りも面白い。
- どんな人間であっても、髪と髭が伸び放題になると、みんなもっさりするのが良い。
- 悪くなかったけど、こういう映画って感想難しいやね。
「夏の終り」
- なぜ、おれはこの映画を観ることになったのか。
- この映画の概要・瀬戸内寂聴の自伝を、主演が満島ひかりで実写化した映画、以上。
- 「コロッケを食べるシーンが音の生々しさも含めてとても良い。コロッケが食べたくなる映画だった」という感想の書かれたブログを見て興味を持った知人に誘われるままに一緒に観たんだけど、開始3秒で満島ひかりがコロッケ食べてる!? そんな風に不意打ち気味にコロッケのシーンが出てきたせいか、特に何の感慨もなかったし、↑の感想書いた人、この映画あまり興味なかったんだなあという予感。そして、序盤辺りで寝落ちする知人。
- 満島ひかりの退廃的な雰囲気は良かったけど、満島ひかりが出る度に、瀬戸内寂聴の顔と共に「のちの寂聴である」という脳内カットインが入って相殺されるので実質マイナス残高。
- 満島ひかりがタバコ吸うシーンが何度か出てくるんですが、吸い方の擦れた感じというか、片思いしてた娘が手慣れた感じでタバコ吸ってるの見ちゃって、「あっ、吸うんだ」という新たな一面の発見の喜び半分と幻滅半分みたいな感情の渦巻く感じ、そこが一番良かった。共感が得られるかは知らん。