実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

アナーキー99に見える絶望。映画「トリプルX」を観た。

 エクストリームスポーツ&スパイアクションな映画。今月公開の「トリプルX 再起動」が観たくて予習。冒頭でのXスポーツのヒーローが、政府機関にスカウトされる展開は去年観た「X-ミッション」を連想したし、それまでのスパイ映画の殻を破ろうという意志は感じた。

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 主演であるヴィン・ディーゼルのキャラクターとアクションが全ての映画。主人公のザンダー・ケイジは反体制・アウトロー側の人間で、スキンヘッドの全身タトゥーで他の映画だったら敵組織のボスみたいな雰囲気出しているんだけど、目が優しげなので笑うと善人っぽさが漂うのは御愛嬌。

 そして安定のサミュエル・L・ジャクソンがしっかりと脇を固めている。どの映画でも初見では「あれ、これサミュエルっぽいな?(確信持てない)」、しばらくして「やっぱりサミュエルだな!・・・たぶん」、エンドロールで「ほら、サミュエルだった」となる現象に誰か名前を付けてほしい。

 アクションシーンは、エクストリームスポーツとスパイアクション要素の比率が高めなので、対状況(雪山とか水上とかの自然環境)みたいなシーンに力が入っている。背後に雪崩が迫りながらスノボで滑走するシーンとかインパクトある絵面だった。格闘戦はどちらかというと少なめなせいか、印象が薄い。ヴィン・ディーゼルが格闘戦やったらかなりイカしていたと思うので、それは残念。

 

 あとこの映画の中で一番印象に残っているのは、アナーキー99という旧ソ連系の敵組織。旧ソ連の軍人たちが結成した組織で、ソ連のために闘い戦友が死んでいく中でソ連が解体し、仲間も帰る国すらも失った結果、国なんかいらねえ、俺たちだけが楽しければいいという結論からアナーキー99を作ったってボスが語るシーンがあるんですが、その後の行動が完全に意味不明でヤバみを感じる。同国人らしき仲間の科学者に化学兵器を積んだミサイル作らせるまではいいんだけど、完成と同時にいきなり科学者全員をその化学兵器でブッ殺した挙句に「この兵器が放たれれば、どこの国が撃ったか分からずに各国が疑心暗鬼になって争いが始まり、最終的に世界は滅びる」って言い出して、ああ、これはテロとかそういうのじゃないんだな、と思った。もっとチープな悪の組織というか、雑なプランを通り越したボンクラの絶望というか、自分のセンサーに何かが反応したので印象に残っている。 

 ド派手なアクションが楽しい映画だった。ストーリーの骨子はやはりスパイ映画で、現代でスパイ映画やろうとすると敵はテロ組織辺りが順当だけど、この映画では、敵がテロ組織とかアウトロー集団というよりかは世界征服を企む類の「悪の組織」なんだよなあ。その辺りのチープさが、映画全体の雰囲気と合っていて、アクションに集中して楽しめた理由かもしれない。あと、あのクライマックスで主人公の取った行動が「ええっ、それでいいの!?」って思った。さすがに雑すぎるだろ! 面白かったけどな!

 

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