実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

ケイン・コスギの片言が止まらない!映画「ニンジャ・アヴェンジャーズ」(公然ネタバレあり)

 去年くらいに何かの予告でこの映画を知って、これからは映画のタイトルに「○○・アベンジャーズ」ってつけるシリーズの幕開けですヨ!

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 と水木先生ばりに鼻息荒く語っていたんですが、権利関係が厳しいのか、それほど誰も興味がなかったのか、2016年現在、アベンジャーズ・シリーズは特に続いていない。そんな訳で、アベンジャーズ・シリーズの始まりと終わりを見届ける者(自称)として、鑑賞することにしました。

 ちなみに発見できたアベンジャーズ・シリーズは非エロ以外はこれだけだったんや・・・少し観たいぞ。

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 この映画はネタバレしない方が難しいので、この記事は公然ネタバレしていきます。というか予告編観たら、作中で伏せている情報を普通にネタバレしているので配慮する必要はないと思う。たとえば「ターミネーター」にターミネーターが出てくるってネタバレしないで感想を書くスキルを、自分含めた人類の多くは保有していないのです。そういうレベルのネタバレです。ケイン・コスギがあんなに堂々とパッケージにも予告編にも出てくるのにケイン・コスギについて触れない訳にはいかないから・・・。


『ニンジャ・アベンジャーズ』予告編

 

 感想を一言で言えば、全体としては予想以上に面白かったが、あまりニンジャでもないし、アベンジャー「ズ」でもない。良い意味で「タイトルが負けた」作品。

 舞台は日本の甲賀流道場から始まる。師範らしき白人男性が「センノセン!」「ゴノセン!」と言いながら、相手を務める女の道場生をあしらって、ニヤッと厭らしい笑みを浮かべている男性こそが本作の主人公=ニンジャである。ちなみにこの女の道場生は主人公の奥さん(妊娠中)で、夜中にチョコと海苔スナック(ノリ・スナック)が食べたいと言い出し、主人公を夜中のコンビニまで買いに行かせた挙句、謎の刺客により棘のついた鎖分銅で殺される。そこで主人公は前に絡んできたチンピラが犯人だと思ったのか、道場破りをして居場所を突き止め、動機とか聞く間もなく問答無用で殺す。この一連の流れに説明は何もない。

 そして、どこから聞きつけたのか奥さんの葬儀(日本)に突然現れた、タイ在住の兄弟子ケイン・コスギを頼って国外逃亡。そこの道場でも主人公は、稽古中につい本気になって相手の道場生を殺しかける。そんな主人公を見かねたケイン・コスギ「ヒワタリシュギョウDA!(訳・火渡り修行で精神に落ち着きを取り戻せ!)」と言い出し、火渡りをすることになるが、精神が乱れて普通に熱かった。その直後に酒場で地元のチンピラ達を怒りに任せて半殺しにする。問答無用で殺す、それがニンジャ=主人公ということが視聴者にもだんだんと伝わってくる。

 その後も色々あって、甲賀道場先代の後継者争いに負け殺された男の弟で、今は麻薬王のゴローが甲賀道場に恨みを持っているからあいつが犯人だと思う、というケイン・コスギの名推理によって、ゴローのいるミャンマーに行ってアジトを手榴弾で爆破し、話の噛み合わないゴローを倒し復讐完了。その間に、戦時中に先代ニンジャが隠した衣装と刀を装備したりする感動シーンもあったりするが、あまり重要なシーンではなかった。

 復讐は終わった・・・と思いきや、衝撃の展開! 全ての黒幕はケイン・コスギだったのだ! 「麻薬王にオレはナル!」という感じで、主人公を利用して商売敵を排除させようというのがケイン・コスギの野望だったのだ! そして始まるケイン・コスギとのラストバトル!

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 全体としてはちゃんとアクションしているし、VSゴローとVSケイン・コスギはそれぞれ見所があった。ただ、ニンジャ要素が必要だったかという点と復讐モノだけど「アベンジャーズ」ってタイトルはいらなかったんじゃ&復讐者は主人公一人なんで「ズ」じゃねえよなあ、とかつまんないことも思った。しかし、そもそも「ニンジャ・アベンジャーズ」ってパンチの効いたタイトルじゃなかったら観なかったし、問題はタイトルで捉えた煽った客層と期待感が、実際の面白さと少し離れていたように感じたことだ。まあ最終的には↑の画像の境地に達したのでとにかくよし!

 

 以下、内容に関する話。

・たまに日本語会話が混ざって字幕表示になるという無駄にバイリンガル仕様。日本語はもちろん片言だ。いやいやいや、大体の日本語会話シーンにケイン・コスギいるんだから、そこは日本語の流暢な(はずの)ケイン・コスギがちゃんと指導しろよ! と思ったけど、逆にケイン・コスギが日本語指導した結果、ああなったのかもしれないという恐ろしい考えに思い至り、スタッフロールで「日本語指導・ケインコスギ」というワードを一生懸命探した(多分なかった)。

・麻薬王のゴローさん、道場の後継者争いに破れた男の弟、というほぼ他人ながらも、異国の地で麻薬王まで上り詰めたのはかなり有能。ゴローさんもまたニンジャなのか、武器術も体術もかなりレベル高い。

・ゴローさんが初登場で数年前に取引を誤魔化したブローカーを「俺は記憶がいいんだ」と縊り殺したエピソードが、主人公と対峙した時に妻の敵と言われて「そういえば白人と結婚したらしいな」とすっとぼけた発言をした部分から真相の一端(=記憶にない=ゴローは無実)は推測できるけど、分かりにくいしあまり意味のない伏線だった。

・日本が舞台のシーンが完全に海外の日本人街なのは仕方がないけど、みんな千円札を大量に持ち歩いているのは面白かった。主人公が奥さんへのプレゼントとして趣味のクソ悪いペンダントを買うシーンがあるんだけど、3万円と言われて千円札30枚で払っていた。

・主人公はニンジャであり、道場主でもあるのでニンジャマスターだ。だけど全体的に迂闊すぎる。たとえば序盤で不審な人物からの尾行を撒こうと、建物の屋根に飛び乗って追手をやり過ごすまでは良かったが、その後、屋根から降りる際、道行く知らないオッサンの目の前に飛び降りてしまい、オッサンが驚きの声をあげてしまう。結果として追手にもバレるという迂闊ぶり。その後はとりあえず暴力で解決した。忍べ、忍んでくれ・・・と思ったがこの映画においてはニンジャ=バイオレンスの象徴なので仕方ない。作中においても、自前の手裏剣より敵から奪った手榴弾の方が効率的に使われているしね。

・一番の衝撃は、最後に登場するケイン・コスギの弟子の言動だった。一目見て事の顛末を察した弟子が主人公に「自分達は(ケインの麻薬取引を)知らなかった」「我々にも守るべき体面があります」「後のことは我々で(内々に)処理します」「どうぞお気をつけてお帰りください」と言ってのけるシーンが一番衝撃を受けた。その言い訳通るんだ!?(通った)。

・実はこの映画には前作が存在して、「NINJA」というドストレートなタイトルがつけられている。主人公が道場の跡目を継ぐまでの話らしい。どうやら兄弟子のケイン・コスギは出てこないようで残念。

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