イーストウッドからのメッセージ。映画「15時17分パリ行き」を観た。
イーストウッド監督作。実際の事件をもとにして、さらに事件の関係者3人をそのまま主人公たちとして起用するという斬新なスタイルは、公開時に話題になっていた記憶。
感想。面白かったけど、イーストウッド監督の安定した完成度の高さなんだけど、やや小さくまとまりすぎた感じもして、バランスの悪さを感じた。実際に2015年に起こった事件を題材にして、実際の関係者をキャストとして起用することで、擬似ドキュメンタリーとしてもよくできていて面白いし、根底にある人間賛歌も感じられて自分好みであったけれど、この映画の根本はそこまで自分には刺さらなかったかなあ。
主人公たち3人の環境・属性は母子家庭、キリスト教(信仰)、アフリカ系アメリカ人、従軍経験なんかで、おそらくイーストウッド監督が描く現在のアメリカなのだと思う。そんな風に、ひとつひとつはありふれた要素を回想シーンを挟んだ描写で積み重ねつつ、やがてその点と点が線になって意味を持つ、というような今のアメリカ人に向けたメッセージも含んでいると思うんだけど、その辺りは当事者でない自分にはあまりピンと来なかったという話。
もちろん、それがこの映画自体の完成度や面白さを損ねるものではなくて、旅行中のホームビデオ風の撮り方とか、回想される各エピソードの内容を短い時間(約90分)の中で効果的に入れ込んでいて良い。気を張らずに観れる、クオリティ高い映画という意味でもオススメ。
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回想シーンで主人公が学生時代に進路を心に決めて、仲間にメールした時はBlackBerry端末だけど、現在はiPhone使ってるっぽくて、そういう小道具のディティールで時代の流れを演出しているのかもしれない。
機種はBlackBerry Bold9780か9700だと思う。この両機種の違いもイマイチ分かっていないけれど。
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監督・脚本・配役の一体感。映画「カメラを止めるな!」を観た(ネタバレなし)。
。 公開前から絶賛している人がちらほらいて、公開直後からも言いたいけど言えない早く観てくれ! 系の感想が出始めたので、本格的なネタバレ喰らう前にダッシュで観に行ってきた。まあ、早く観に行っても感想書くのは遅いけれど(笑)
感想。映画館で観れて良かったタイプの映画だった。そして、これは確かにネタバレせずに黙って人に勧めたい映画だし、そうやって観た人に語りたいけど語れないという感情を生じさせているのもヒットの要因。普通に観ても面白いし、それに映画好き程、この映画の良さが噛み締められるというのも大きい。
タイトルの「ONE CUT OF THE DEAD」通り、ワンカット撮影はこの映画の見所のひとつであり、それが前半と後半でワンカット撮影の持つ意味が全然違ってくるのは注目。ワンカット撮影がただの演出・技巧に留まらず、映画内でしっかりと意味を持たせた映画という意味では革新的だと思う。
あらすじ自体が映画監督の主人公が映画撮影をする映画という多重メタ構造になっているので最初は戸惑うけど、そのまま戸惑ったまま楽しんでほしいし、戸惑っていれば戸惑っているほど、この映画の後半になっていくと面白さに転化していく構成が面白いし、そういう映画の演出的な面白さの他にも、主人公の、監督=父親としての再起のドラマでもあり、そこもとても良かった。
全体的に見せ方が上手くて、親子関係や父母2人の娘であるということが分かる言動とか、全体から細かい所まで練りに練られて作られた映画だなあという印象。ワンカット撮影するのも綿密なリハーサルとカメラワークが必要だし、監督・脚本・演出を全て監督でやっていることの必然性も感じられて、今年を代表する邦画のひとつと言っても過言ではないレベルで良かったので、是非オススメ。
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映画「レッド・スパロー」を観た。
ジェニファー・ローレンス主演。この人の初見作が「マザー!」なので、そのインパクトが強くて、全然別人に見えてしまう。
女スパイもので、アクション系スパイというよりかは、ハニートラップや諜報系スパイ。話の都合上、女優のセクシーさを全面に出していく展開なのでとても良い。
スパイはスパイでもロシアンスパイなので、ロシア帽や水着やドレス等を着た色々なファッションのジェニファー・ロレンスが観れるし、ロシアの諜報機関の訓練シーンとか殺し屋の拷問シーンとか細部のディティールは良いんだけど、全体的に話が散漫で、サスペンスとしてはイマイチ。訓練シーンも公衆の面前でのアレだけは意味が良く分からなかった。同じ女スパイもの系統だと「アトミックブロンド」とどうしても比べてしまって、難しい。方向性は全然違うし、この映画も悪くはないけど、うーん難しい。
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似た系統の映画だとこちらも。個人的にはこっちの映画の方が好みだったかな。
才能と後悔の物語。映画「gifted/ギフテッド」を観た。
あの名作「(500日)のサマー」のマーク・ウェブ監督の映画なので、「(500日の)サマー」好きの人間としては観ないわけにはいかない。
↑のパッケージの通り、主演は「キャプテンアメリカ」でお馴染みのクリス・エヴァンスと、女の子はマッケナ・グレイス。
ギフテッド(神様からの贈り物)というタイトル通り、これは才能にまつわる映画で、持って生まれた才能や能力は何のために使うべきか、という話。自分はそういうテーマが好きすぎる。パッと頭に浮かんだのは漫画なら水上悟志の「サイコスタッフ」(下のリンクから無料で読める)とか、映画なら「セッション」「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」とか、そういう話。
自殺した姉(数学者)の娘メアリー(数学の天才児)と、その娘を預かることになった独身の弟フランクが主人公で話は進むんですが、そんな天才児に子供らしく普通に生活するんだというフランクと、才能を持って生まれた人間には才能を活かす責任があるとメアリーに英才教育させようとする母親との対立なんかも絡ませながら話は進んでいくんだけど、それぞれの思いと主張にはそれぞれに過去とエゴがあって、どちらの言い分もなんとなく分かるし反論も分かる、というバランス感覚が良い。どちらも、同じ人物に対する過去の後悔を子供メアリーでやり直そうとしている側面があって、その辺りの感情の機微の描き方が上手くて、そしてさらに終盤の展開でやられた! と思った。
この映画のキモは天才と凡人の話だけでなく、姉(あるいは弟)と母親の親子の確執の話でもあって、終盤で主人公によって明かされた真相によって、話の角度がぐるりと変化して、自殺した姉の立ち位置が一変した瞬間が一番グッときた。その結果として、メアリー自身の話が少しぼやけてしまったのは残念だったけれど。そんな天才児役のマッケナ・グレイスが表情豊かで、「周りが子供に見えて退屈で仕方がない」って感じの大人びた子供の表情がとても良くて、フランク含めた大人とのやり取りが「(500日の)サマー」を思い出す軽妙さで面白かった。
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