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実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

映画「杉原千畝」を観た(ネタバレなし)

映画

 たまたま映画の券が当たったので行ってきた。ネタバレはなし、って言っても実話だからネタバレもクソもないのだけれど。

 

 

1・杉原千畝とは

  杉原千畝 - Wikipediaから引用。詳しくはリンク先から。

杉原 千畝(すぎはら ちうね、1900年(明治33年)1月1日 - 1986年(昭和61年)7月31日)とは、日本の官僚、外交官である。
第二次世界大戦中、リトアニアのカウナス領事館に赴任していた杉原は、ナチス・ドイツの迫害によりポーランド等欧州各地から逃れてきた難民たちの窮状に同情。1940年7月から8月にかけて、外務省からの訓令に反して、大量のビザ(通過査証)を発給し、およそ6,000人にのぼる避難民を救ったことで知られる。その避難民の多くが、ユダヤ系であった。「日本のシンドラー」などと呼ばれることがある。 早稲田大学高等師範部英語(教育学部英語英文学科)科予科中退、日露協会学校特修科修了。

 別に全然知らなくても楽しめるけど、まあ予備知識としてあったら得かなあぐらい。 

 

2・感想の前菜

  • 映画では分かりやすさ重視でカットされているような瑣末な部分の話でも書いておく。
  • ジャンルとしては邦画だけど、監督は外国人。そのせいか映画内での万能共通語は英語。登場出てくる人達は基本的に英語を話す。リトアニア人もポーランド人もユダヤ人もロシア人も。別にいいけどね。
  • 別にいいけど、序盤でリトアニアに赴任した杉原が、バーで話しかけて(言葉が通じないせいか)無視されるシーンがあって、英語とか複数の言語で話しかけるけど無視され続けて、ついにロシア語で話すと店主がブチきれるんだけど(リトアニアはロシアに支配されていた歴史がある)、言語的多彩さが出てくるのはこのシーンだけだ。
  • 実際の杉原千畝はロシア人女性と結婚し後に離婚。またその時に洗礼を受けたクリスチャンだった、というのは「命のビザ」を発給した杉原の行動原理を捉える上でひとつのファクターとして大事かもしれない。映画ではそれらしさは匂わせるけど、そういった描写はない。
  • 杉原千畝は知ってたけど、他の前情報なしで観たせいか、序盤は中井貴一黒木華が演じていると思っていた(ひどすぎる)。実際は唐沢寿明小雪である。

 

3・感想

  • 正直言って面白かった。今、このタイミングでこの映画を観れたのは良かったと思う。映画の内容4割、時事的なタイミング6割で面白かった。
  • 日本での杉原千畝の知名度って、近年まではそこまで高くなかったように思う。歴史好きの人は知ってるだろうけど、たまに話題や著作で取り扱う人がいるかなあぐらい。2000年に日本政府が公的に名誉回復(あとドラマ化)をしてから知るようになったという人は結構多いのでは。
  • 監督が外国人だけど、杉原千畝をスパイ、諜報員としてしか捉えていない描き方をしているのは面白い。
  • 少し時事的な話もする。ちなみに自分はメロス並みに政治はわからぬ。
  • 時事的なタイミングというのは、IS関連というかシリア空爆あの辺りの話を、映画を観ながら連想したからだ。
  • 作中でのユダヤ人は現在のシリア難民と置き換えられるよなあ。ユダヤ亡命者達を救おうと命のビザを発行した杉原千畝や同じように動いていた各国の人達のした事は素晴らしいし、人道的な偉業だ。それは間違いない。
  • そういう視点で言えば、今のシリアの空爆と、それによって生じた難民をドイツをはじめとしたユーロ圏が受け入れている姿勢も、表面だけ捉えてみたら同じように人道的なのかもしれないけど、移民を受け入れまくった後の国に何が起こっているかというと、あまりハッピーではないように見える。フランスのテロとか。どちらが正しいかは置いておいて、移民の中にそういった敵意が混じっている可能性というのはある。
  • 映画でも、現代でも、「ロシア」と「ドイツ(広くはユーロ)」の思惑が引き起こしている状況というのは共通してるとか何とか言いながら無理矢理、普通の感想に戻す。
  • この映画が面白いのは、日本人が好きそうな「人道主義の日本人が外国にいた実話」調に傾倒してなくて、「海外で諜報活動をしていたエージェントが結果として多くの難民の命を救った実話」という視点があるということ。
  • 主人公は人道主義の男ではなく、過去にも悪名を轟かせた諜報員が小国の領事として潜伏したという流れで描かれている。唐沢寿明も人格者というよりは、諜報員らしい小男さのような演技をしている風に見えた。
  • でも一応、要所要所は人格者寄せのシーンもある。満鉄の協力者に対する後悔から教会での決意とか。唐突感は結構あったけど。
  • 逆に諜報員、エージェントとしての描写はもリトアニアに領事として潜入してポーランドの諜報員と接触して、共同歩調を取り情報収集活動を開始する流れはスマート。
  • 外部から見ると、すげえ怪しい動きばっかりしてるよなあ杉原千畝。史実としても、周辺国からの情報はかなり入手して外務省に送っていたようだし。
  • 映画版の「ジョーカー・ゲーム」観るよりも、スパイ映画としてのレベルは高いよ。映画ちゃんと観てないけどな(映画版のコミカライズと原作小説は読んだ。原作小説は名作)。
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  • 亡命者を国外に逃がすことで、国益になると判断された部分もあるんだろうなと思う。ソ連に併合されたリトアニアの国民は同化政策なんかで数千人規模で死んでいるし、ドイツ軍に一時的に占領された時もホロコーストで大勢のユダヤ人が死んでいるけど、それらの一部でも救えていたのは間違いない。
  •  まあ、時事的なものを抜いても、客層が広がるので大作指向の強い年末映画として、結構観れる映画ではないかと思う。スパイものとしても観れるし、実話を元にした日本人万歳の感動話としても観れるし。
  • ちなみにスタッフロールでは↓の本が原作としてタイトルが上がっていた。やっぱりな!
諜報の天才 杉原千畝(新潮選書)

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