実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

犬と婆と林遣都。映画「しゃぼん玉」を観た。

 原作小説は未読。乃南アサの本はたぶん一冊も読んだことないはず。

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 犬と婆(市原悦子)と林遣都(達磨一家の日向紀久)。都会で荒んでいた若者が田舎(自然)で癒される、つまりそういう映画です。普通の話で、普通の映画で、それでも普通に良かった。全体的に役者の演技クオリティが高いせいか、安定して観れたのがポイントだと思う。ロケ地が宮崎県の村全体を使っていて、山奥とか自然の風景はとても綺麗だった。

 あらすじ的には主人公である林遣都の来歴が「ひったくり常習犯で、ある時たまたまひったくり犯行時に女性をナイフで刺してしまいそのまま逃走」と割とハードんだけど、犯した罪の内容ではなく、罪を犯したという設定の方が大事なので、あまり気にしてはいけない。ちょっと事情があって村に出戻りしている女の子(藤井美菜)が出てきて、その結構ハードな事情も後半で明かされて林遣都にダイレクトアタック!という感じで、映画全体がすっごい嫌な感じになって・・・は来ない優しい世界(笑)

 ラスト付近については言いたいことがまあ少しはあるけど、それを言って面白くなる映画でもなく、そういう優しい世界の映画なので・・・。ただ、ラストでこれまでの登場人物を一切映していないのは、他の登場人物が主人公に対してどういう感情を抱いているかが見えなくて、そこに解釈の余地を残していたのは、とても良かったように思う。

 ここからはハイロー話にもなるけれど、序盤の林遣都は本当に達磨一家(休暇中)って感じで、シーズン2とザムビの間の不在期間の話という設定で観てもハイローファンなら問題ない・・・はず(笑) 

 

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2018年1月に観た映画

1月(6作)

  1. キングスマン2 ゴールデンサークル」

    ippaihaten.hatenablog.com

  2. 「しゃぼん玉」

    ippaihaten.hatenablog.com

  3. 「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

    ippaihaten.hatenablog.com

  4. 銀魂

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  5. 「武曲」

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  6. 「お嬢さん」

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  今年もまたよろしくお願いします。今年は映画レビュー以外のこともやるんだ・・・と小さく決意宣言。 

 

カントリーロードは神曲。映画「キングスマン2 ゴールデンサークル」を観た。

 2018年映画初めの映画としては申し分ない作品。

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 前作も最高に面白かったので、今作も結構期待してたんですが、上の画像のように舞台をアメリカ(カウボーイ)に移しつつそれに応えてくれる傑作でした。

 序盤からハイテンションのカー&ギミックアクションで度肝を抜かれつつ、前作の登場人物をダイナミックに清算しつつ、瞬間的にキングスマンを壊滅させたりしながら、アメリカの支部組織「ステイツマン」と共に、新たな敵と戦うという王道展開。アメリカ版マリーンであるジンジャーエールが褐色知的美人すぎて良いし、何故かエルトン・ジョンもゲイネタを繰り出しつつ活躍しているぞ!・・・本当に何なんだ(笑)

 割と展開は雑なんだけど、そういう細かい話はいらないでしょ、この映画に来た君らは? という感じでざっくり切り捨てているのは好感。また今回の敵も前作に劣らずクレイジーで最高に良い。前作も今作も人間嫌いの潔癖症みたいな性格なのが面白いし、倫理的にはともかく敵なりの正義で世界を良くしようとしているとする感じるレベルのクレイジーさがよろしい。今回の敵は麻薬王なんだけど、一周回ってドラッグ・ダメゼッタイというポリシーすら感じる。あと今回もハンバーガーネタがあって大満足。悪役にとっての最高のもてなしはハンバーガーに限る。

 そして、この映画でカントリーロード神曲となり、カントリーロードで脳裏に浮かぶ映画が「耳をすませば」から「キングスマンGC(ゴールデンサークル)」へと更新されてしまった。 キングスマンのスーツを乱れさせないアクションや遊び心しかない変な道具ギミックも前作に負けず劣らずカッコいいので、前作楽しめた人は確実にオススメな作品。 

 

 

 

黒人と白人と貧困の境界線。映画「ムーンライト」を観た。

 2017年のアカデミー賞受賞作。同年の候補作「ラ・ラ・ランド」とどちらがアカデミー賞を取るかで注目されていたのは記憶に新しい。

ムーンライト(字幕版)

 ↑の三分割された画像のように、一人の主人公の人生を3つの章と3つの年代に分けて構成されている。

 感想。面白かった良作だけど、日本人には少し分かりにくいテーマだったと思う。テーマの理解が面白さに直結するわけではないけれど、その辺りと終盤の展開は確かにあまりピンと来なかったなあとは思った。

 あらすじは「リトル」「シャロン」「ブラック」の3章構成で、各タイトルはそれぞれの年代で主人公の呼び名になっている。3人の俳優がそれぞれ演じているんだけど、結果として一人の人物に見えるという撮り方と演技が凄い。特に時の流れによる変化まで織り込んだ演技が凄くて、どういうことかと言うと、気の弱い少年だった主人公が大人になって筋肉ムキムキのイカつい外見になってるんだけど、昔の親友と再会した時にフッと少年時代の気弱な性格だった頃の表情が出てくるシーンがあるんだけど、ここの演技と表情が本当に神がかっていると思うので必見。この映画観たらいずれにしろ必見になるんだけどさ。

 映画全体としてはイマイチ乗れなかった部分もあったのは確かで、この映画のそれぞれの章では角度と比重を変えながら黒人と貧困(ドラッグ)と同性愛を描いていて、それぞれの章ではその主題をあえて言葉で多く語らずに、カメラの目線だけで語って見せたり、時間の流れを登場人物の不在や言動の変化で描く手法はとても面白かった。

 だけど、この映画はあくまで黒人コミュニティ内の話で、これって単純に白人に置き換え可能な話でもあるよなあとは思った。一歩間違えると黒人版「ブロークバックマウンテン」になりかねないなあと思ってしまったのは残念。いや、どちらも名作なのは間違いないけど。たぶん、自分はこの映画「ムーンライト」のラストのあの展開(と台詞)が本当に唐突過ぎて、最後に雑に畳んできたなと思ってしまったので、そこが引っ掛かっているのだと思っている。なのでそこだけはうーんという感じ。とは言え、あそこで話を切らないと蛇足になるし、映画自体も面白さを維持できない長尺になってしまうと思うけれど・・・。

 この映画を観ながら、現代における黒人と白人と貧困層の境界線というものを少し思った。現代のアメリカでは、その三つに特別な差異はないようにも思える。逆に、現代では「アメリカンヒストリーX」や「グラントリノ」のような構図の映画が撮れない(?)ように、この映画も現代のアメリカでしか撮れない映画なのかもしれないなあという風にも思った。この映画も少し経って振り返ってみると、時代の変化を捉えた映画になっているのかもしれない。

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  ちなみにこの映画のタイトル「ムーンライト」の意味は、作中でも触れられているけど、月光の下では黒人の肌も綺麗なブルーに見えるという台詞から。この映画はとにかく画面が綺麗で、後から知った話だと撮影した後に黒人の肌が美しく見えるように再着色処理をしているらしい。

 ガツンとしたインパクトはないものの、撮り方が丁寧で静かな良作でした。

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ムーンライト(吹替版)