実家の犬が踊る

狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり

タイトルの本当の意味。映画「ゲットアウト」を観た(後半ネタバレ)。

 アカデミー賞関連で、脚本賞を取って話題になっていたので観てみた。↓のパッケージが一番この映画を象徴していて好き。観終わった後に改めて見返したくなる。

ゲット・アウト(吹替版)

 感想。やられた! いや、やられた・・・? タイトルである 「Get Out !(出ていけ!)」という言葉が、ストーリー上で重要なキーワードになってはいるんだけど、他の部分(真相)でのインパクトが強過ぎて、正直言って印象が薄い。でもまあ、事前情報(あらすじ)よりも斜め上の展開で面白かった。この映画はある種の、人種差別がテーマと言えなくもないんだけど、作中でも少し触れているように古いテーマではあるんだけど、ある意味では現代でないと成立しない類のテーマのようにも思える。

 ラストは2パターンあって、オバマ政権からトランプ政権になって差し替えられたらしいんだけど、お蔵入りになったバージョンの方も、ある種の悪意があって悪くないと思うけど、あえてシンプルなラストにしたのはとても良いと思う。 

 この映画のテーマはともかく、仕掛けと展開は人によってかなり評価が割れると思うけど、映画好きなら観てほしいと思う。ところで話は全然変わるけど、自分はこの映画が大好きなんだけど、観てる人いる?

  楽しめた人なら、この映画も観てみようぜ! って言える・・・これ以上はネタバレせずに言及するの難しいので、以下のネタバレは「続きを読む」からどうぞ。

 

  • ジャンルとしてはサスペンスというよりホラーかブラックコメディという感じだったので難しいなあと思った。だってホラーってホラー好きの人は喜ぶけど、ホラー嫌いな人は嫌がるじゃん無理に見せようとすると。人種差別がテーマですって手に取らせて、仕掛けと展開が催眠術と脳手術のホラーでした、だと怒る人はいると思う。
  • でも、そういう人にも観てほしいという意志は感じるし、そういう人にこそ届けたい作品であり、テーマなんじゃないのか? とも思う。
  • ぶっちゃけると、形を変えた黒人差別の話で、下への差別というか上への差別、みたいな。平たく言うと、身体的に優れた黒人の肉体に、白人の脳(人格)を移植しよう、細かいことは催眠術で誤魔化そう・・・本当に成功した! って感じ。
  • 被差別から差別をなくそうと持ち上げた過ぎた結果、逆差別へと至ったというのが、この映画のテーマとする人種差別だと自分は思った。昔は牛馬よりも便利な労働力で、今は便利な人体ドナー(臓器農場)ですって感じの。
  • いや、それにしても中盤から後半にかけての真相(脳手術と催眠術)と展開は驚いた。ジャンルも世界観もガラリと変わってのジェットコースター! そういう意味だと本当に「ホット・ファズ」とを思い出すし、似てると思う(自分のああいう書き方は、露骨なネタバレだったかな?)
  • よくよく見るとこの映画はやはり、ブラックコメディでありB級映画という感じがしてくるなあ。70年代か80年代くらいの、繰り返し放送に耐えうる映画としてのB級。
  • そもそもの発端が、当時(この映画でいう祖父の時代)としては黒人への斬新な発想(差別思想もとい優生思想)と方法だったんだろうけど、それが現代まで受け継がれ生き延びていたという所がこの映画のミソだと思う。こういうストーリーの映画が過去に作られてもおかしくはないし、その当時に公開されても悪趣味ではあるだけで、特に何の問題にもならなかった時代だと思うんだけど、これを現代で作って公開すると問題にはならないけど、波紋(話題)になるってのが面白いと思う。実際に話題になっているかは知らないけど。
  • でもこういう展開で、この映画にB級感としての勢いがついたのでラストは今のラストで良かったと思う。別の形で人種差別やレイシズムをテーマにするんだったらお蔵入りになった逮捕エンドの方が良かっただろうけど、シンプルに締めるのは大事よ。