黒人と白人と貧困の境界線。映画「ムーンライト」を観た。
2017年のアカデミー賞受賞作。同年の候補作「ラ・ラ・ランド」とどちらがアカデミー賞を取るかで注目されていたのは記憶に新しい。
↑の三分割された画像のように、一人の主人公の人生を3つの章と3つの年代に分けて構成されている。
感想。面白かった良作だけど、日本人には少し分かりにくいテーマだったと思う。テーマの理解が面白さに直結するわけではないけれど、その辺りと終盤の展開は確かにあまりピンと来なかったなあとは思った。
あらすじは「リトル」「シャロン」「ブラック」の3章構成で、各タイトルはそれぞれの年代で主人公の呼び名になっている。3人の俳優がそれぞれ演じているんだけど、結果として一人の人物に見えるという撮り方と演技が凄い。特に時の流れによる変化まで織り込んだ演技が凄くて、どういうことかと言うと、気の弱い少年だった主人公が大人になって筋肉ムキムキのイカつい外見になってるんだけど、昔の親友と再会した時にフッと少年時代の気弱な性格だった頃の表情が出てくるシーンがあるんだけど、ここの演技と表情が本当に神がかっていると思うので必見。この映画観たらいずれにしろ必見になるんだけどさ。
映画全体としてはイマイチ乗れなかった部分もあったのは確かで、この映画のそれぞれの章では角度と比重を変えながら黒人と貧困(ドラッグ)と同性愛を描いていて、それぞれの章ではその主題をあえて言葉で多く語らずに、カメラの目線だけで語って見せたり、時間の流れを登場人物の不在や言動の変化で描く手法はとても面白かった。
だけど、この映画はあくまで黒人コミュニティ内の話で、これって単純に白人に置き換え可能な話でもあるよなあとは思った。一歩間違えると黒人版「ブロークバックマウンテン」になりかねないなあと思ってしまったのは残念。いや、どちらも名作なのは間違いないけど。たぶん、自分はこの映画「ムーンライト」のラストのあの展開(と台詞)が本当に唐突過ぎて、最後に雑に畳んできたなと思ってしまったので、そこが引っ掛かっているのだと思っている。なのでそこだけはうーんという感じ。とは言え、あそこで話を切らないと蛇足になるし、映画自体も面白さを維持できない長尺になってしまうと思うけれど・・・。
この映画を観ながら、現代における黒人と白人と貧困層の境界線というものを少し思った。現代のアメリカでは、その三つに特別な差異はないようにも思える。逆に、現代では「アメリカンヒストリーX」や「グラントリノ」のような構図の映画が撮れない(?)ように、この映画も現代のアメリカでしか撮れない映画なのかもしれないなあという風にも思った。この映画も少し経って振り返ってみると、時代の変化を捉えた映画になっているのかもしれない。
ちなみにこの映画のタイトル「ムーンライト」の意味は、作中でも触れられているけど、月光の下では黒人の肌も綺麗なブルーに見えるという台詞から。この映画はとにかく画面が綺麗で、後から知った話だと撮影した後に黒人の肌が美しく見えるように再着色処理をしているらしい。
ガツンとしたインパクトはないものの、撮り方が丁寧で静かな良作でした。
映画「清須会議」を観た。
三谷作品って結構久しぶりに観る気がする。
感想。映画としてはイマイチだった。
史実の清洲会議って割とマイナーな題材だと思うけど、いきなり映画の規模でやる話ではないんじゃないの?と思った。スペシャルドラマか舞台くらいの規模なら分かるけど、その辺りでやるとチープになりそうだし、どうしてもやりたかったら映画が一番ベターという結論なのだろうか・・・。
映画自体は特にコメントはないけど、秀吉役に大泉洋を起用したセンスのみは光っていたし、そのキャストで観てみたいと思った人は多そう。
この映画とは直接関係ないけど、この映画を観ていて思ったのは、史実系の映画を観る時、そこに描かれていない物語(史実)を思い描くのは結構面白いなあということ。
たとえば、史実で言えばこの清須会議の翌年に秀吉(大泉洋)は柴田勝家(役所広司)との対立が深まり、賤ケ岳の戦いで争ったり、最終的には朝鮮出兵までするんだけど、この映画の大泉洋ベースの秀吉で考えると「どんな顔してやっていたんだろうなあ」という空想で楽しめた。猿としての秀吉が大泉洋というのは何となく繋がるんだけど、太閤としての秀吉があまりイメージ繋がらないのは、製作者も意図していないんだろうけど、そんな風に新たな楽しみ方を発見できたのはまあ良かった。
【追記】2017年の宿題をやっつけた
↓(2018年1月1日更新)
どうもお久しぶりです。2か月ぶりくらいの更新になりましたが、なんとか無事に年を越せました。
11月と12月もちゃんと映画観たり色々してたのですが、ブログは更新できなかったので、しばらくの間は2017年としてのブログ記事を更新していきます。年月日は大体の日付で。それをやらなければ2018年は越せないので。
しばらくはお付き合いください。それでは引き続き本年もよろしくお願いします。
↓(2018年1月18日追記)
とりあえず二週間くらいかけて、2017年に観た映画の感想を書いた。まだ書けてないやつもあるけど、それはまた気が向いたら。
一応、その期間に書いた記事のリンクを貼っておく。
2017年12月に観た映画
12月(8作)
- 「HiGH&LOW THE MOVIE3 Final Mission」
- 「ハードコア」
- 「ブレードランナー」
- 「スパルタ」
- 「美女と野獣」
- 「ムーンライト」
- 「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
- 「清須会議」
12月は忙しかったとか言いつつ、現実逃避的に割と観ていたっぽい。映画とか創作物って観る状況で受け取り方や印象の残り方がかなり変わると思っていて、そういう時ほど名作に出会えるような気がするジレンマ。